●エネルギー問題は使う側から考えなければいけない
小宮山 エネルギーの問題を扱うエネルギーの専門家は皆、エネルギーを供給する人たちなのです。電力関連の人、石油関連の人、ガス関連の人など皆、エネルギーを供給する人です。
でも本当は使う側の方が重要なのです。例えば、トヨタなどの自動車に乗ってエネルギーを消費している人は非常に多いのですが、トヨタの人は「エネルギーの専門家」にはなりません。けれども、いわば彼らもその専門家です。トヨタに限りませんが、自動車のエネルギー消費がここ20年で4分の1ほどになっています。昔はリッター当たりの走行距離が5キロぐらいしかなかったものが、今は30キロほどになっているのです。だから、エネルギーの専門家の位置付けをよく考えなくてはいけません。使う人たちの側からよく考えないといけないのです。
島田 それについて少しフォローさせてください。非常に良いポイントなのです。というのも、明治以来そうだからです。本当をいうと、もっと前からそうなのですが、政府の構造とは全部縦割りで、役所が産業を管轄することになっています。農水省も経産省も何もかも。これは全て生産者側の立場です。
電力に関しても全く同じです。総理が「電力の問題はどうなっているのだ」と聞くと、「はい、こうなっています」と言って集まってくる人たちは、経産省の関係者です。だけど、経産省の関係者は全て生産者側の人間です。彼らは、電力について完全に生産者に当たります。専門家と言われる人はそういう人だけです。だから私は、小泉さんの話を聞いて、「なるほど、総理というのはそういう立場なのだ」と思いました。これを変えなければ駄目だと思ったのです。
小泉 (総理だった当時は)原油が高騰していた時でした。原油の依存度を下げなければいけないということで、それならば「原発だ」ということになったのです。
●エネルギー専門家が見ようとしない、再生可能エネルギーの将来性
小宮山 もう一つ問題なのは、彼らには先が見えないことです。先を見るのは非常に難しい。われわれはずっと、「再生可能エネルギーはものすごく安くなる」と言ってきたのです。発電の効率がどれぐらい上がるかとか、ガラスがどれぐらい薄くなっていくとか、細かいことをかなり精査して、それを元に非常に安くなっていくと話してきたのです。でも電力関連の人たちは、そんなことをしても喜ばないのです。自分の売上が減りますし、結局そういうことはやりたくないのでしょう。「やりたくない」という思いに加えて、そうした技術評価を真面目にやりません。太陽電池についても、真面目には取り組んでいるとは思えません。そこが問題なのです。
島田 エネルギー基本計画をしっかりと読みましたが、全て、小宮山さんたちの主張とは逆のことが書いてありました。
小宮山 そうでしょう。
島田 それは彼らが生産者側の人間だからです。小泉さんは総理の時、そうした人たちに囲まれていたから、「原発が必要だと思った」と言ったわけです。そうして、退任後、それは違うのではないかと思い、勉強したら全部違うということが分かりました。こんなにはっきりと言う人は、世の中にいません。
小泉 「こういう事態にほっかむりして寝ていてはいけない」と思ったのです。過ちだと分かったのだから、素直に反省して謝らなければいけません。その代わり、日本は原発ゼロにした方が、さらにいい国になると思ったのです。
小宮山 そうですよね。
●再生可能エネルギーは「高くて少なくて安定しない」のか
小泉 それは、太陽も風力も地熱も水力もですが、再生可能エネルギーを進める上で日本は恵まれた環境にあるからです。こんなに豊かなエネルギー源は他にないと思います。それほど日本は自然エネルギーに恵まれている国なのです。
小宮山 「再生可能エネルギーは高くて量も少なくて不安定だ」と言われているけれども、私が言いたいのはこのことが全部うそだということです。ここ10年ほどで、太陽発電や風力発電、地熱発電など再生可能エネルギーは安く量も十分な状態になり、さらに蓄電池も安くなってきたから、安定化もできるようになってきたのです。
小泉 太陽光発電でも風力発電でも、蓄電池が発達してきていますね。太陽は陰れば駄目、風はやめば駄目といわれるけれども、そうではないのですよね。
面白い話があります。「自然エネルギーを使っているのは良い社会だろう」というと、「自然エネルギーなんて、せいぜい全体の電源の1~2パーセントだろう」といわれるのですが、例えば山手線の話です。東京の山手線の内側の土地を全部、太陽光発電のためにつぶしたとしても、発電量はわずかしかないといわれます。しかし、原発がほぼ止まっている状態の現在、山手線の内側の土地をつ...