●政府と大企業が、理解を示さない
島田 私が小泉さんをすごいと思うのは、権力構造にしばられないところです。かつては総理大臣ですから、権力の中枢にいた人です。その人が今、一番権力が嫌っているところへ、ガーンと入りました。小泉さんは「トモダチ作戦を見ろ。兵士たちはあんなにやってくれた。20~30代の元気な兵士がボロボロになっても、最後に『俺は日本が好きだよ』と言ってくれた」と記者会見で話して涙を見せたそうですが、それはやはりインパクトがあります。
小泉 それを知っていながら、政府は何もできないというのです。日本のために救援活動をしてくれた人が病気で苦しんでいるのに、何もできないのです。それでは申し訳ないだろうということで今、活動をやっているのです。
島田 大企業は、最初こそ「いいですね」と言うのですが、結局皆、降りていってしまいます。
小泉 会社で相談してみるということですが、後になって「やっぱりやめてくれと言われたから、勘弁してくれ」と言われます。発起人になることはできないだというのです。だから、大企業とは関係のない人に発起人になってもらいました。
●日本でも寄付文化の醸成が必要だ
小宮山 寄付は、これからの基本です。2015年からギビング・ディッセンバー(寄付月間)というものをやっています。これは、日本に寄付文化を醸成させるための試みです。先進国は、基本的に政府に金がなくなります。税収が増えなくなり、他方で義務的な支出が増えてきます。大学もそうで、今の話ではないですが、入ってくるお金は減ってくるのです。それならば、どこで金を集めるかといえば、結局、個人の寄付しかないのではないでしょうか。
島田 そうだと思います。
小宮山 日本にはビル・ゲイツのような桁のお金をかせぐ人はいないけれども、1桁下ぐらいの金持ちは増えてきていますし、いわゆる金持ちという人も結構多い。この人たちが、例えば1パーセントずつ公共のために寄付してくれたら、全然違ってきます。そう考えて、2015年からギビング・ディッセンバーに取り組んでいるのです。
島田 それは大賛成です。日本が、欧米諸国だけではなく韓国などに比べてもすごく遅れているのは、行政のシステム上、寄付がとてもやりにくいことです。例えば、韓国の大学に行くと、財閥の名前を付けた建物がたくさんあるでしょう。あれは寄付によるものです。しかし、日本でそれをやろうとしても駄目なのです。結局、文科省が認めなければ駄目、財務省が認めなければ駄目で、その壁を超えなければいけないのです。また、寄付したらしたで税額控除にしてくれなどと言いますが、それは本当の寄付ではないと思います。本当の寄付は意欲があればいいですし、それならば多少税金を取られてもよいと思うのです。
小泉 トモダチ作戦も、税額控除はありません。
島田 そうでしょう。
小泉 そんなのは要らないといって、寄付してくれています。
島田 それで良いのです。それが本当の寄付なのです。私は、日本人にもそういう精神があると思います。
●「核のごみ」の処理には、想像の域を超えた時間がかかる
小宮山 今、アメリカでは、トモダチ作戦についての裁判を進めているのですか。
小泉 進めています。3~4年はかかるといわれていて、今、控訴したところです。日本でやるか、カリフォルニアでやるか(の判断を求めているところだそうです)。
小宮山 事実認定は相当進んでいるのでしょうか。
小泉 やっているけれども、なかなか進まないようです。裁判も遅れています。だから、3~4年かかるということです。なぜ進まないのか、よく分からないのです。
島田 それは、アメリカ側もやりたくないからです。
小泉 (日本もアメリカも)両方やりたくない。
島田 権力が批判されるからでしょう。(今回の作戦を)突き詰めていくと、アメリカの海軍は何をしていたのかということになるのです。なぜなら、外交関係者は皆、退去させていて、軍でも80キロ以上退去するようにいわれている中で、(原発の)至近距離で兵士を動かせたのですから、これは大責任問題です。
小泉 今、小宮山先生が言われたように、原発は、理論的にも実証的にもコストが一番高い。ごみのことを考えても、日本には捨て場所が全くありません。どんどんたまっていくだけです。しかも最終処分には何千年、何万年とかかります。
小宮山 歴史といっても、人類の歴史は1万年しかありません。それに対して、10万年とは、いったいどうするのかという話です。
島田 小泉さんがオンカロに行った後、面白い話をされたのですね。原発や放射能関係の物の側に黄色と黒のマークが表示されていますが、それに関連した話で、10万年たったら、フィンランドの人たちはいったい何語を話しているのか、と...