●トモダチ作戦に参加した兵士たちの現状を聞きに行く
小泉 各地で脱原発を主張する中、トモダチ作戦の話を持って来る人がいたのです。「ぜひとも話を聞いてほしい」と。2011年3月11日の事故当時、原子力空母レーガンに乗り込んでいた海軍は、韓国に向かって太平洋上を進んでいたのです。そこで、福島の原発のメルトダウン大災害、地震、津波のことを聞いて、日本政府の要請に従い、進路を変更して急きょ駆けつけてくれたのです。いわゆる「トモダチ作戦」です。
沖合に約1カ月間停泊して、ヘリコプターに乗って様々な救援活動をしてくれました。その兵士たちが、原因不明の病気にかかっているというのです。あまり報道されていないので、世の中にはほとんど知られていません。そこで、「私の話を聞いてほしい」と言った人が、「ぜひ小泉さんがカリフォルニアのサンディエゴに行って、今、病気になっているトモダチ作戦の兵士から直接話を聞いてほしい」と言うのです。「小泉さんが話を聞きに来たということなら、少しはマスコミも報道してくれるのではないか」ということで、2016年の5月、4日間の予定で行きました。
10人から一人ずつ、約30分から1時間程度、話を聞きました。彼らは、20~30代の海兵隊の兵士ですから、健康診断でも軍隊活動には全く問題ないという健康な人間ばかりだったのです。しかし、今はもう正常な活動ができないため、除隊せざるを得ないということです。
私に「話を聞いてほしい」と言ってきた兵士たちは、症状が比較的軽い人たちです。もっとずっと重い人もいます。その人はテレビ画面を通して会談すると言っていたのですが、その時間が迫ってくると、容態が重くなったからテレビ越しでも話せないということで、結局収録場所に来られなかったのです。とはいえ、10人に一人一人個別に話を聞き、「ああ、こんなに病気に苦しんでいる人たちがいたのか」と思いました。
日本のマスコミはどうしてこれを報道しないのか、と不思議に思いました。しかし、話を聞いているうちに、これは日本だけの問題ではない、と気が付きました。アメリカの軍隊も、放射能の問題についてはあまり知られたくないのではないかと思ったのです。
小宮山 そうですよね。
●国防総省の報告書には「放射能による健康被害とは断定できない」」
小泉 (当時、放射能を帯びた)風が海岸に吹いていました。(アメリカの海兵隊員たちはそんな中、)防護服を着ないで救援活動を行ったのです。ヘリコプターで現地に向かい帰ってくるのですが、原子力空母ですから放射能測定器があるのです。これが鳴り出したのです。「あ、これは放射能ではないか」という声も出ているビデオテープを、兵士が見せてくれました。「俺たちは放射能の真っただ中にいるのではないか。すぐ服を脱いで、シャワー浴びろ」と言われたそうです。
しかし、服を脱いでも、まだ放射能(測定器)が鳴っているというのです。後で聞いたら、海水を真水にしてシャワーを浴びていたのです。また空母の食事は軍隊食で、いろいろと水を使います。その水も海水を真水にしたもので、それを料理に使っていたのです。その場合、塩分は除去できますが、放射性物質は除去できないそうです。
ということは結果的に、外部被ばくと内部被ばくの両方なのです。最初、半年ほどは海軍の病院にいて、お医者さんに診てもらいましたが、原因不明とのことでした。それから1年2年たつと鼻血や下血が止まらくなったそうです。どうも身体がおかしいと言っているのだけれども、お医者さんは原因不明だといいます。そこで、「これ(原因)は放射能ではないか」という噂が、だんだん大きくなってきたのです。
アメリカの議会にしても、これは急なことでした。アメリカ議会から国防総省に、あの兵士たちの体はどうなっているのか、という問い合わせが行きます。アメリカの国防総省が議会に対して提出した報告書には、「この病は、放射能による健康被害とは断定できない」とありました。
●妊娠中の女性兵士から生まれたのは障害児だった
小泉 これは東電の主張と同じです。そこで裁判が始まりました。裁判長を呼んで日本でやるか、カリフォルニアでやるかという議論になりました。東電の主張は、これは裁判に適さないというものです。しかし、カリフォルニアの裁判所は、東電の申し立てを却下して、カリフォルニアで裁判すると言いました。そこで、東電は控訴しました。結論が出るまでにあと3~4年かかるということで、日本の裁判所で行うことを求めたのです。
アメリカの被告たちは、仮に日本で裁判をやった場合、証人としては来られないと言います。病人ですし、日米間の航空運賃も自分では負担できないということです。調べると、海兵隊に所属する隊員は決して裕福な家庭ではない層の人たちが...