●稼働原発がほとんどなくても、日本社会は困っていない
小泉 私が原発ゼロと発言した2013年は、「そんなことを言っても、将来ならともかく、直ちにゼロになんてできるわけがない」と言われました。ところが今、(2011年から)5年7カ月と、時間はかかったけれども、ほとんどゼロの状態です。実際に、2011年3月から2013年9月まで稼働した原発はたった2基。その前、54基もあったのに、です。あの事故の後、2013年9月から2015年9月までは稼働ゼロ。2015年9月から今までは、1基か2基でしょう。
5年7カ月間、(原発は)ほとんどゼロという状態でしたが、全然困らないし、停電もなし、です。
島田 これは大変な実証例です。かつて日本は(原発が)約50基あり、日本の電力の3分の1を支えて初めて成り立つと言っていました。ところが実際にはなくても(困らないということです)。
●ここ10年で減り始めたエネルギー使用量
小宮山 大事な話があります。何かというと、ここ10年間ほど電力もエネルギーも(使用量は)減り始めていることです。エネルギー消費は年率1.6パーセントで減り始めています。しかし政府は、これを考慮していません。別に国民を我慢させているわけではありません。自動車の数や家の数がもう飽和状態で、車であればおよそ6,000万台、家もおよそ6,000万軒です。そこのところで飽和していて、効率はどんどん上がっているのです。
小泉 省エネ技術も発達していますしね。
小宮山 そうです。省エネが一番大きいのです。だから今のままいくと、大体2050年にはエネルギー消費は60パーセントほど減少するということです。政府案では、(2030年の)原子力比率を20~22パーセントとしていますが、それはエネルギーレベルでいくという話で考えているからで、その分がなくなってちょうど良い具合になるのです。エネルギー消費は減り、電力は余るのです。結局、使う人が少なくなるからです。
しかも、生活のレベルはどんどん上がっていきます。ここが非常に大きな問題です。確かに省エネは一番重要です。パリでの(COP21の)話もそうで、1に省エネ、2に再生可能エネルギー、3が石炭をどうやって減らすか、です。しかし、原発の話はほとんど出ませんでした。
島田 (フランスも)原発はやっていますけれど、ね。
小宮山 フランスは(原発を)減らそうとしています。さすがにこれ以上進めてはいけないということが分かり始めているのでしょう。このままでは、日本は置いてけぼりになります。中国では、再生可能エネルギーによる電力が28パーセントになったのです。
島田 風力発電などをすごい勢いで造っていますね。
小宮山 中国は、2030年には再生可能エネルギーを53パーセント、さらに2050年には80パーセントにすると言っています。だから、いろいろと世界の動きを見ていけば分かるように、日本がいつまでも「原発、原発」と言っていると、完全に遅れてしまうということです。
●原発ゼロでも停電は起こっていない
小泉 太陽光発電でも、中国製で安いものがどんどん日本に入ってきているでしょう。日本は遅れているからです。
ドイツでもスペインでも、自然エネルギーだけで全電源の30パーセントを今、実現しています。日本は、原発54基で30パーセントだったのです。だから、自然エネルギーによる発電ができないというのは、おかしな話です。(震災から)5年7カ月ほどたって、原発はほとんどゼロ稼働で、東京でも大阪でも全然停電は起こっていません。この事実は大きいのです。
小宮山 この間、停電が起きたのは雨によるものですからね。
小泉 そうです。事故で停電になることはあります。しかし、電力が足りないために停電になったことはありません。原発がたった2基でも、あるいは原発ゼロでも、こうこうと街灯やネオンは点いています。冷房や暖房も平常通り使えています。こういう実態を政府はどう考えているのか。
島田 今、小宮山さんと小泉さんが話されたことを私なりに引き継きますと、国民レベルでは粛々と生活していて、その中で構造改革や技術革新が進み、電力の需要は減っている。さらに自然エネルギーのコストはどんどん安くなっていて、賄えるようになってきている。一方、権力の側、例えば大企業や政府、原発関係者といった人たちは、「違う、違う」と言っている。ところが、トモダチ作戦のような犠牲者が出た。しかし、メディアはほとんど報道しない。政府も握りつぶす、といった状況の中で、小泉さんがたった1人、それにチャレンジしたのです。そうしたら、国民の中でそれを聞いた人は感動して、「じゃあ、小泉さん頑張ってよ」と皆が言い出しているのです。こうした状況は良いですね。日本人の民衆(の感覚)はとても良いですね。
●処分場がないのに、「核のごみ」を出し続けるのか
小泉...