目の健康と医療・最前線
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遠くが見えるのは必ずしも「目が良い」ことではない
目の健康と医療・最前線(4)目が良い・目が悪いとは?
大鹿哲郎(筑波大学眼科教授)
遠くが見える人は「目が良い」のか。この当たり前のように思えることに、筑波大学眼科教授・大鹿哲郎氏は疑問を呈する。例えば、子どもの頃は遠くが見えた方が何かと好都合だが、年齢を重ねて老眼になれば、近くが見えることの方が自慢になる。どのような「目」が良いかは、年齢や生活条件によって変化するのだ。(全5話中第4話)
時間:6分08秒
収録日:2017年2月25日
追加日:2017年3月26日
≪全文≫

●現代社会では「遠くが見える」必要は、あまりない


 私たちはよく「目が良い」とか「目が悪い」という言い方をします。しかしこれは、日本語に特徴的な言い方です。例えば英語だと、「bad sight」や「poor vision」などという言い方をしますが、これは「視力が良い・悪い」のことであって、「目が良い・悪い」という話ではありません。

 特に子どもの頃は、遠くが見えると「目が良い」、近視の人は「目が悪い」といわれます。この表現は日本語として根付いているのでしょうがないことですが、概念としては、誤解を生むような言い方です。

 確かに大昔であれば、遠くが見えるかどうかは死活問題です。獲物を狩るときや隣の部族が攻めてきたときには、いち早くそれを見つけた方が勝ちだからです。そうした場合なら、遠くが見える方が良いので、それは「目が良い」ということになるでしょう。

 しかし現代社会で、そんなに遠くばかり見ていることはありません。アフリカのサバンナに生きていれば、遠くが見えることは重要です。しかし現代社会、特に日本では、身の回りを見ていることが多い。統計によれば、大人は生活時間の3分の2は1~2メートル以内の「身の回り」を見ているといわれます。そういう状態では、遠くにピントが合っている状態は、かえって疲れる原因になります。むしろ軽い近視くらいの方が現代生活にはマッチしているのです。つまり、その方が疲れにくく現代に適合した目であるといえます。


●「過矯正」はトラブルの原因になる


 近視の方は、眼鏡やコンタクトをすると思いますが、(今言った理由で)その度はあまり強すぎない方が良いのです。1.0や2.0の度数にすれば、確かに眼鏡をかけたときによく見えると感じます。しかし、日常生活では、そのくらいの視力だと非常に疲れてしまいます。少し控えめにする方が良いでしょう。具体的には、0.8~0.9くらいに合わせて日常生活を送った方が、目にはよほど楽なのです。

 また、レーシックという手術がありますが、これが時々問題になる原因の一つは、「過矯正」です。手術によって近視が治り視力が2.0や1.5などになると嬉しいので、そういった手術をする人もいますが、その視力だと強すぎるのです。手術直後はよく見えて嬉しいと思うのですが、その視力でずっと過ごしていると、目が疲れてしまい、肩が凝ったり頭が痛くなったり、下手をすると吐き気...

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