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トランプ大統領の登場で中国の脅威は弱まる?

トランプ政権と今後の世界情勢(3)中国が見せた新動向

白石隆
公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者
概要・テキスト
トランプ大統領の登場は、当初思われたほど米中関係を緊張させていない。また南シナ海問題も、現状凍結で推移している。立命館大学特別招聘教授でジェトロ・アジア経済研究所長の白石隆氏は、アジアにおける中国の脅威はしばらく後退するだろうと見る。では今後、アジア地域の連携はどうなるか。そこで日本はどのように振る舞うべきなのか。(全5話中第3話)
時間:14:16
収録日:2017/02/16
追加日:2017/04/17
カテゴリー:
≪全文≫

●習近平政権の外交動向


「一つの中国」をトランプ大統領も一応は認めましたので、これによって最初からものすごく米中が衝突して緊張が激化することはなくなると思います。また。台湾が米中のディール(交渉)の駒になることも、どうもなさそうです。これは一安心ですね。

 私は正直に言って、蔡英文総統では本当に心配でした。確かにあの人は、何も言わずにじっと我慢していて大変な人だとは思いますが、いずれにしても一番の懸案はとりあえず収まりそうです。

 ただそれは、別に米中の関係が良くなるということではありません。ここから本当のディールが始まります。そのディールの1つ目はもちろん通商ですが、2つ目が北朝鮮、3つ目にサイバー・セキュリティーの問題だと、私は思っています。どれもなかなか難しい問題です。

 その交渉がどのぐらいできるのか。ワシントンにいる私の知り合いなどは、来週から始まっても不思議はないと言っています。もうすぐこの方向で、何らかの動きが出てくるようだとも言います。

 中国は、昨年(2016年)11月にフィリピンのドゥテルテ大統領が習近平国家主席と会談しました。私が聞いたところでは、南シナ海について、習近平主席ははっきりとしたコミットメントこそしていないそうですが、現状凍結にするという提案をドゥテルテ大統領がして、そして現状ではそうなっています。スプラトリーの人工島建設と軍事化はとりあえず凍結されています。また皆が最も関心を持っているスカボロー礁の人工島建設もまったく始まっていません。

 とりあえず、こういう現状凍結状態が続いており、しかも中国政府は、南シナ海における例の「行動規範」(の作成)もずっとさぼっています。時間をかけて何もしないでおいて、その間に既成事実を積み重ねていく。これが中国のやり方でしたが、これをもう今年(2017年)中にはまとめてしまおうという動きがあるのです。

 RCEP(東アジア地域包括的経済連携)についても、習近平主席がこの前のダボス会議(2017年1月)で「自由貿易」だと言いました。言ったからには公約を実現しなければいけません。これも私の推測ですが、質はどうあれ、ともかくまとめてしまおうとするのではないでしょうか。


●中国がひとまず脅威ではなくなる可能性がある


 となると意外にも、中国がこの地域で脅威ではなくなる可能性が、当面のところ出てきたと...
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