●現在進めている研究
今、(『オンリーイエスタディ』という)原稿を原稿用紙600枚分ほど書き進めたのですが、これがどうなるか。多分、2,000枚ぐらいの大きい本になるのではないかと思います。
ただ、ひょっとすると全部は終わらないかもしれません。そして、どういう形で発表するのかも問題です。1冊の本にまとめて出すのがいいか、それとも新書か何かで3分冊にして出すのがいいか。今は本当に雑誌という媒体が危機的状況なので、なかなか連載にするのは難しいと思うのですが、気持ちとしてはどこかで連載できないかということを考えています。
というのも、今進めている原稿を実際に全部まとめるとなると、早くてもおそらく3~4年ぐらいかかります。(新たな資料を)どんどん読んでいますから。当たり前のことですが、本を書くために調べ始めると、きりがありません。ある意味では、その作業が一番楽しいのですが。ですので、完成にはまだ数年はかかるでしょう。
●レーガン政権以降のアジア政策
その原稿の第2章では、アメリカのアジア政策を扱っています。ここで、レーガン政権からクリントン政権までの変遷を見ており、大きく分けると二つのセクションがあります。
一つ目のセクションは、レーガン政権、父ブッシュ(ジョージ・H・W・ブッシュ)政権、それからクリントン政権で、ホワイトハウスの運営がどう行われたかについてです。各政権で政策の優先順位はおのずと決まっていきます。何が戦略上大きく、優先順の高い課題だったか。またこの時期、冷戦が終わりますが、それによって政権運営がどのように変わってくるのか。その人物と大戦略の変化を描くのが、最初の部分です。
後半はそれを踏まえて展開されます。特にレーガン政権以降は、グローバル化戦略、つまりグローバル化が大きな政策目標になります。グローバル化こそ、アメリカにとっての利益であり、世界にとっても良い、という理解の下に、さまざまなグローバル化を推し進める政策を取ります。私はそれを、「グローバル化戦略」と呼んでいます。
大きく分けると、国境を越えた資本の移動の自由化、そして貿易の自由化、さらに民主主義支援、この三つです。それらをどうやって進めたのか。
このグローバル化戦略の中で、対中政策および対日政策がどういうものとして出てきたのか。この点をずっと調べていくと、別に意図したわけではないのですが、やはり現在のトランプ政権を考える上でも、これらが分析の鏡になることが分かります。この時代のグローバル化戦略と比較して、ドナルド・トランプ大統領がどうして反グローバル主義を掲げるのか。彼が反グローバリズムだということはよくいわれますが、では実際の反グローバリズムとはどういうことなのか。この問題は、先のグローバル化戦略と照らし合わせてみると、非常によく分かります。
そういう意味で、この原稿は今後4~5年間、発表せずにずっと置いておいてキープするよりも、むしろ適時連載の形でも出した方が良いのではないか。おそらく読者にとっても、1980~90年代にアジアがどう変わっていったのか単に知るだけではなく、それを読むことで現在を振り返り、さらに現代のことが分かる方が良いでしょう。少なくとも私は、そのように理解し始めています。だから、連載をどこかでできないかと思っている最中です。
●自由こそアメリカの強みである
トランプ大統領にとって、ロナルド・レーガン元大統領は英雄だったという話もありますし、人によっては、彼はまたレーガン政権がやったようなことをするのではないかという話もありますが、私はそうした考え方は相当ピントを外していると思います。
レーガンという人は「勘所」だけは全く外さなかった人なのです。勘所といっても非常に単純なことです。要するに「アメリカは大変な力を持っているのだ」ということで、当時はロシアではなくソ連ですが、そのソ連との冷戦でアメリカが戦略的に優位に立つためには、アメリカの持てる力を十分に発揮すればそれでいいという考え方が一つの典型です。
この場合、アメリカが持っている強さとは何かといえば、それは「自由、Freedom」であるといいます。ここでいう「Freedom」は、政治的な意味での自由と言えば民主主義を指すし、金融における自由といえば、国境を越えた資本移動です。また、通商においては、もちろん通商の自由です。すなわち、あらゆるところで自由を進めていくことです。
この自由こそが実はアメリカそのもので、ある意味で非常に単純な言い方なのですが、まさにアメリカ人という感じです。今度(のトランプ大統領)は、それを全部ノーといっています。レーガン政権や父ブッシュ政権は、本当にプロ中のプロが担った政権だと思います。父ブッシュ政権時に、いかにホワイトハウスが...