トランプ政権と今後の世界情勢
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
政権交代時の混乱にみるトランプとレーガンの類似点
トランプ政権と今後の世界情勢(2)新政権迷走の要因
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
かつてレーガン政権では、国家安全保障会議の迷走が政権に混乱を招いた。一方、トランプ政権は、類似の組織を三つも抱え、人事レベルで出鼻をくじかれている。立命館大学特別招聘教授でジェトロ・アジア経済研究所長の白石隆氏が、ホワイトハウス体制の緻密な分析をベースに、現在の政権が抱える政治的混乱の原因と今後の見通しを語った。(全5話中第2話)
時間:14分46秒
収録日:2017年2月16日
追加日:2017年4月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●ホワイトハウス運営の難しさ


 政権交代時にホワイトハウスが混乱する要因はいくつかあります。一つは、例えば政策や戦略の話そのものではなく、ホワイトハウスという組織、あるいはアメリカ政府の一番の頭脳の部分をどうマネジメントするか。これが、私が非常に大きな関心を持っている点です。

 この視点で見ると、確かにトランプ政権にはレーガン政権と似たところがあります。レーガン政権は8年続きましたが、その間にナショナル・セキュリティー・アドバイザー(NSA、安全保障担当補佐官)は6人代わりました。どんどん代わっていって、4人目のジョン・ポインデクスター氏の時に、イラン・コントラ事件が発覚します。

 この時は、ひょっとしたらレーガン大統領が弾劾されるのではないか、というほどの大変な危機でした。突き詰めていうと、その原因はナショナル・セキュリティー・カウンシル(NSC、国家安全保障会議)のマネジメントが駄目だったことです。この件について、ロナルド・レーガン大統領が知っていたかどうかはよく分かりませんが、彼自身はそうしたマイクロマネジャーではないので、知らなかったはずだと私は思っています。

 ともかく、NSCの一角で、政策を決めるはずの機関が政策の実施をやり始めていたのです。それが、オリバー・ノースという人が引き起こしたイラン・コントラ事件です。アメリカの武器をイランに売り、その利益をニカラグアの(反政府武装組織)「コントラ」という勢力にお金を渡していた、というとんでもないスキャンダルをやっていたのです。


●長官同士の調整すらままならなかった、初期のレーガン政権


 その後、後に国防長官になるフランク・カールッチ氏、そしてコリン・パウエル氏の2人が入って、この組織をやっと立て直します。しかし、この時代、ナショナル・セキュリティー・アドバイザーが、ほとんど何も調整できないのです。要するに「小物」なので、国防長官や国務長官と比べても格が全く違うのです。

 レーガン政権時、1年目は少しガタガタしますが、2年目になると国防長官にキャスパー・ワインバーガーという人が就任し、国務長官はジョージ・シュルツ氏でした。この2人は非常に仲が悪い。2人の間で入っているNSCのアドバイザーは、格の面でも知識の面でも、両者に対抗できません。

 レーガン大統領は、そういう対立に対して「はいはい」と言って調整す...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
山口芳裕
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治