●志津川湾の海底調査
これは志津川湾ですが、赤いハッチがしてある所に漁具が設置されており、漁業者がここで活動をしています。この湾の内側は、ほとんどに漁具が入っていました。このように広いところは本当に調査が大変だと思いました。Murphyさんたちの調査で分かっていたように、湾内にはいろいろなものが落ちています。そこでわれわれは湾内ではなく、その外の海底を調べるということを目的にしました。
この調査にあたっては、「遺体捜索に行くわけではない」と、あらかじめ公言していました。先ほど申しましたように、遺体捜索は海上自衛隊と海上保安庁、そうした国の組織の仕事だからです。われわれ民間人がそうしたことを標榜すべきではありません。このようにして、先に申し上げたような調査をしたわけです。
●再調査の依頼
これは先ほどの図をクローズアップしたものです。志津川の漁業組合の方と、たくさんの地点を調べました。調査の結果、今すぐにでも漁業施設を設置できることが分かると、漁業組合の方々は元気になり、実際、すぐに設置を始めました。しかし、再び9月ごろに電話がかかってきて、「もう一度調査をしてくれないか」と言うのです。われわれは湾の全域を調査したわけではなく、やり残した所がありました。そこに漁業施設を設置するとなると、海底にどういうものがあるか、もう少し詳しく知っておきたいというわけなのです。そこで9月にもう一度志津川に向かうことになりました。
●音響装置を使った海底調査
5月の調査と9月の調査はどう違うか。5月の調査では、とにかく準備の時間がなく、あるものを持っていって、最低限のことしかできませんでした。しかし、9月の調査の折には、もうすでに多くのことが分かっており、その準備をすることができました。
今度は、サイドスキャンという音響装置を使って、海面から海底の様子を調べることにしたのです。これで何が落ちているのか、その分布が面的に分かります。そのうえで、遠隔操縦機のカメラロボを潜らせて、そこにたまっているものが何かを特定する、そういう作戦に出ました。サイドスキャンについては、東陽テクニカさんに協力をお願いをし、彼らも二つ返事でやってくれました。
まず反射の強いところを選別して、インターフェロメトリーソナーを使って海底の凹凸を確認します。そうして、大きな残骸がある可能性のある場所を選定します。50カ所ほど選定し、カメラロボットを使って画像で確認する、というのが今回の重要な作業です。その後は、発見された大きな残骸をグラブを使って取り除きます。こうして漁具の設置が可能になり、漁業が復興するわけです。
●音響装置とカメラロボットを組み合わせた調査
われわれはこれだけの範囲を音響装置で調べました。3日間で3.3平方キロのスキャニングをしました。この海底の反射強度がこれです。黒く見えている所は硬いものがあり、反射が強い所です。これは岬からつながった、岩が出ている所です。それ以外にも点々とありますが、それが残骸です。もちろん岬の先の辺りは岩ですが、しかしこれを見ただけでは、それが岩か残骸かということは分かりません。
そこで、それぞれの場所を探して、例えばここをクローズアップします。そうすれば、何かがあるということが分かるようになります。反射強度を3次元的に描くことによって、残骸かどうかを確認していきます。60点ぐらいの場所を選んでROVを下ろしました。例えば4番の地点ですが、3次元的にでこぼこが描いてあり、何かが出っ張っています。出っ張りの高さは14メートルで、そこに自動車が落ちているということが分かります。これは問題です。自動車からは油が出てきますから、それが養殖しているものにかかると良くありません。自動車を取り除かないといけない、ということになります。
これは2日前、1月24日の朝に志津川で撮影したものです。今の4番はこのあたりです。もう現在は震災から6年近くたち、ワカメやカキなどの養殖施設が志津川湾全体に広がっています。われわれの調査の成果として、どんどん復興が進んできており、とてもうれしいことです。
●陸地はかさ上げされているが、復興半ばである
志津川町は陸地をかさ上げすることにしました。昔住宅地であった所は、何メートルか高く土を積んでいます。現在もその作業をしていて、まだそこには何も建物は建っていません。もちろん、新しい家が山の方を切り開いて建てられていますが、現在も陸の方はいまだに震災の跡が残っているという状況です。
●水産高校にカメラロボを知ってもらう作戦
9月の調査の時には、石巻の宮城県水産高校の先生方をお呼びしました。彼らもひどく津波にやられました。宮古水産高校もお呼びしましたが、都合がつきませんでした。ともあれ、先生た...