遠隔操縦機~重作業ROV
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「かいこう」の失踪が物語るケーブル付きROVの問題点
遠隔操縦機~重作業ROV(5)ケーブルの功罪
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
日本が開発した「かいこう」は、1995年に1万1,000メートルまで潜った。しかし2003年、ケーブルが切れて先端部分が行方不明になった。九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏が繰り返し強調するのは、「ひも付き」ROVのメリットとデメリットだ。どう使うにせよ、その点を踏まえることが重要である。(全5話中第5話)
時間:8分46秒
収録日:2016年6月15日
追加日:2017年2月15日
≪全文≫

●2000年台以降のROVの展開


 写真でお見せしているのは、3,000メートル級のCANYONというアメリカのROVです。2000年代になって新しいROVがどんどん開発され、進歩しています。これはSAABという会社がつくっているROVで、2015年10月に沖縄沖でこれを運転していました。ケージの中にROVが入っています。こちらはJAMSTEC(海洋開発研究機構)が使っているHYPER-DOLPHINEです。もうそろそろ20年選手になるもので、カナダのISEという会社がつくっています。アメリカの海洋を研究している機関が持っている、調査用のROVです。こういったものが全世界中に使われています。

 このROVが評価を高めたのは、「Deepwater Horizon」の事件です。メキシコ湾では石油を掘っていて、数年前にここで爆発が起こりました。石油を掘っているところから、石油がボーンと出て、それに火がついてしまい、爆発しました。しかも海底のパイプが切れて、さらにそこからも原油が出てしまいました。それを止めるのが大変で、何カ月もかかりました。これは海面で火事を消している写真ですが、この下からも油がどんどん出てきていました。その油をどうやったら止めればいいのか。これはもう重作業遠隔のROVでしか仕事はできません。ここに重作業ROVを何台も投入して、油がぼこぼこ出ているところを止めに行きました。深さは1,500メートルです。こういう大規模なものをROVで止めるのはとても大変だったのですが、それは成功しました。


●日本が誇るROV「かいこう」


 さて、次は「かいこう」のご紹介をしたいと思います。「かいこう」は日本を代表する遠隔操縦機で1万1,000メートルに潜れます。1995年に1万1,000メートルに到達しています。上部はランチャー、これがビークルです。

 どのように1万1,000メートルまで展開されるかというと、ランチャーとビークルが一緒にくっついていって、まるで釣りのおもりのように下がっていきます。海底へずっとケーブルを出していきます。例えば、1万メートル潜るのなら、ケーブルを1万メートル出します。

 そうやって海底に着きます。この次にどうするか。このケーブルの太さは約4センチです。こんな太いケーブルがあり、ここから電力も送っているし、さらには潮力にも耐えなければいけません。これを出して海底に着くと、ウインチから2次ケーブルを出して、この周りで作業をします。このランチャーの重さは...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(1)木造建築の歴史と現在
伝統木造建築はいま都市で必要な建物ではない
腰原幹雄
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一