●情報拡散のキーマンは誰か?
これまでは炎上事例を取り上げてきましたが、今度は、マーケティングにおける情報拡散についても見てみましょう。できるだけ情報が拡散される方法を考える際に、重要になってくるのが、情報拡散のキーマンです。キーマンは誰なのかを理解すれば、その方が情報を拡散してくれるだろうと、期待できます。そこで、情報拡散のキーマンの探し方について考えてみましょう。
情報発信者として、どのようなタイプの人がいるのかということは、ロジャースの普及モデルを用いて考えることができます。このモデルは消費財の普及に関するもので、ある商品が出たときに、それを採用する速度によって、消費者を分けています。
新しい商品が出るとすぐに飛び付いて、それを最初に取り入れる人たちは、イノベータと呼ばれます。次に、アーリーアダプタと呼ばれる人たちがいます。これは、イノベータが飛び付いた後に、新商品を使い出す人たちです。こうした、かなり初期の段階で新商品を取り入れる人たちに続いて、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティが出てきます。この人たちは、どちらかというと大衆です。アーリーマジョリティは、比較的早く商品を採用する人で、レイトマジョリティは、みんなが採用したのを見て、ぼちぼちと採用していく人を指します。
そして、最後に、ラガードと呼ばれる人たちがいます。全く新商品には手を出さず、かなり後になってから、それを購入する人たちです。例えば、今では多くの人はスマートフォンを使っていますが、その中で、いわゆるガラケーをいまだに使っている人は、ラガードに当たります。ラガードが悪いというわけではなく、ただ、新しい商品にはあまり興味がない、ということです。
これを情報発信者に置き換えて、考えてみましょう。イノベータは、新しい情報をどんどん仕入れてくる人で、アーリーアダプタは、これに初期に反応する人です。さらに、アーリーマジョリティとレイトマジョリティは、イノベータやアーリーアダプタから拡散されてきたものに反応する人たちであり、他方、ラガードは、それにあまり反応しない人たちだと考えることができます。
●アーリーアダプタの方が継続率は高い
情報拡散においては、イノベータとアーリーアダプタがどのような働きをするのか、ということが重要です。そこで、彼らに注目する意味について考えていきたいと思います。
イノベータは、情報を自ら獲得して、他の人に伝えるユーザーです。Twitterのことを考えた場合、Twitterに情報を載せるという行為そのものが、イノベーティブな行動になるでしょう。オリジナルのツイートをした人は、イノベータだとみなせます。もちろん、単にオリジナルのツイートをするだけでは、あまり意味がなく、そこから拡散していくということが重要です。1つのツイートが、平均100回以上リツイートされたユーザー、つまり、その人が書くと100人ぐらいに拡散されるような人を、イノベータと呼ぶことにします。
一方、アーリーアダプタは、イノベータが出した情報に、素早く反応できる人たちです。そこで、バーストするようなリツイートを、初期に行うユーザーを、アーリーアダプタと呼ぶことにします。つまり、みんなが興味を持ちそうな情報に、いち早く飛び付いている人です。その人がリツイートすれば、その後、少なくとも平均して100回ぐらいはリツイートが続くことになります。
こうしたイノベータとアーリーアダプタを、比較してみましょう。一般的に、リツイートは、最初に大きな山ができて、それからだんだん減っていくという流れを見せます。最初の上がり調子のときに、リツイートをしている人が、アーリーアダプタに当たります。
このように、イノベータとアーリーアダプタは、どちらも簡単にデータから発見できます。しかし果たして、彼らにアプローチすることに、どれほどの意味があるのでしょうか。この点について見るためには、継続率を考えなければなりません。つまり、イノベータはずっとイノベータなのか、アーリーアダプタはずっとアーリーアダプタなのか、ということです。
例えば、書いたものが100件ぐらいリツイートされるという、イノベータがいるとします。この人はずっとそうなのか、それとも、そのときにたまたまそうだっただけなのかということは、普通は分かりません。そこで、継続率を調べてみる必要があるのです。ずっと継続してイノベータであれば、その人にアプローチすればいい、ということになります。他方、もしその人が、次の月にはイノベータではなくなっているとすれば、その人にアプローチしてもあまり意味がありません。同様に、アーリーアダプタについても、その人に先にアプローチするのか、後にアプローチするのかということが、重要になってきま...