●20世紀と21世紀の違いとインターネット
慶應大学の曽根です。
グーテンベルクの聖書というのが、歴史の中で大きな役割を果たしたというのは確かですが、あるとき、ハーバード大学の入学式か卒業式にたまたま行きましたら、そこで学長が「20世紀と21世紀の違いは何か」という内容で演説をしていました。
20世紀は教科書がスタンダードになり、21世紀はインターネットがスタンダードになった。では、20世紀に教科書がスタンダードになる前は何をしていたのかというと、先生が話したことを一生懸命筆記していた。日本でも戦前の帝国大学などでは学生が必死になって筆記した。「教科書をまず配り、学生と先生は後で討論、ディスカッションをすればよいではないか」と、今の時代の人は思うだろう。しかし、貴重な話というのは、教授が話し、それを学生が筆記して記録するというのが当たり前の時代だった。ところが、それが20世紀になると、印刷された教科書をもとに授業が行われるようになった―――そのような話でした。
20世紀と21世紀の違いは何かと言うと、紙の教科書から今度はインターネットを使うようになったことです、大量な放送が可能になり、双方向になるという大きな転換点がそこに出てくるのです。
●インターネットの三つの特徴(1):中心権力のない「自律分散協調」システム
インターネットというのは、一般的に「技術で便利になった」とだけ捉えている人も多いかもしれませんが、三つの特徴を申し上げます。
一つは、歴史の中で哲学的にアナーキズムがありましたが、このアナーキズムを現実に実践できるということでは、インターネットは最初のツールだったのではないかと思います。
よくインターネットを「自律分散協調」という呼び方をする人もいますが、つまり中心権力がなくても、TCP/IPという非常に簡単なプロトコルで流すことができるというものです。アナーキズムが現実的に実践されたことは一度もなかったわけですが、インターネットという中心の権力がないシステムで、意外と簡単なメカニズムでうまくいく。これが一つの大きな特徴です。
●インターネットの三つの特徴(2):放送と通信の区別がなくなった
それから、二つ目としては、インターネットは放送と通信の壁を取り払いました。
私が「これが放送の原型かな」と思った経験があります。アトランタのCNNか...