「学びたい」心のための環境づくり
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
人間だけが大人になっても「学び」を持続できる
「学びたい」心のための環境づくり
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
人生を豊かに、充実したものにするために、必要不可欠なスパイスとなるのが「好奇心」であることを否定する人はいないだろう。しかし、この「好奇心」は、進化生物学見地からすると、どのように考えられるのだろうか。行動生態学や自然人類学の専門家としてチンパンジーやクジャクなどの研究に携わってきた長谷川眞理子氏に「学びとは何か」について、人類を大きなスパンで捉えながら解説いただく。
時間:4分54秒
収録日:2018年2月14日
追加日:2018年5月1日
≪全文≫

●「学びたい」は子どもゴコロの証


 進化的に考えると、学びたいという心や好奇心は、子どもの特質です。小さい子は、本当は「学ぶな」と言っても学ぶぐらい好奇心が強い。何でも「どうして?」と聞いてくるし、知識欲に飢えています。

 ところが、大人になるにしたがってだんだん好奇心が薄れていきます。動物は、みんなそうなのです。イヌでもサルでもヒツジでも、子どもの頃はいろいろなところを掘りかえしたり、かぎ回ったりして、何が起こるか観察しています。それに、ケンカやレスリングのようなことをしたり、高い所から飛び降りたりして、体を限界まで使ってみようとします。

 そういうことをやるのが楽しくてしょうがないのです。その結果、転んだり落ちたりして痛い目にも遭うのですが、そういうことがしたくてしょうがないということです。


●人間だけが大人になっても「学び」を持続できる


 それが大人になると、サルでもチンパンジーでもイヌでも、だんだんそういうことをしなくなって、現状維持になってしまいます。

 多分人間も、動物たちのそういう側面を引き継いでいるので、子どもの持つあれほどの好奇心がずっと続くということは、普通それほど多くはないと思います。

 でも人間の大人にかぎっては、ずっと好奇心も持てるし学びたいと思うことが続けられるのです。そこが人間の非常に人間らしい特徴だと思います。

 その原動力には、やはり知らないよりは知っている方が面白いし、説明をしたいという欲求があると思います。ちゃんと説明ができる、自分が分かっていると思うことが、うれしくて心地いい。それは、人間の本質の中にある特徴なのでしょう。


●社会変化への適応だけでない「一生の学び」の価値


 もう一つお伝えしたいのは、あまりにもいろいろなものが進展していく現代社会では、子どものときに身に付けたことだけでその先ずっとやっていけるわけではなくなってしまったということです。

 人類の進化史において20万年や10万年のスパンを考えると、槍の作り方や石器の作り方など、一度習熟すればそれで一生いけた時代が長かったのです。ところが、農耕が始まり、牧畜が始まり、産業革命が起こり、社会がどんどん変化していくと、技術もどんどん新しいものが出てきて、新しい概念も出てきます。そういうものに追いつかないと、浦島太郎のようになってしまうという...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ