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ライフネット生命創業者が大学学長になった理由

出口治明が語る「教養と日本の未来」(1)学長就任の理由

出口治明
元・立命館アジア太平洋大学(APU)学長
情報・テキスト
2018年1月、ライフネット生命の社長、会長を歴任した出口治明氏は、公募によって立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任した。なぜ出口氏は、立命館アジア太平洋大学(APU)学長を引き受けたのか。APUの学風やビジョンと、契機ともいえる小宮山宏氏との出会いについて語る。(全3話中第1話)
時間:07:27
収録日:2018/02/23
追加日:2018/05/01
カテゴリー:
≪全文≫

●立命館アジア太平洋大学(APU)の多様性


 皆さん、こんにちは。立命館アジア太平洋大学学長の出口治明です。立命館アジア太平洋大学は普段、英語の頭文字を取りAPU(Asia Pacific University)と読んでいます。よろしくお願いします。

 僕は大学卒業後、大企業で約30年働き、還暦の時にベンチャー企業であるライフネット生命(現ライフネット生命保険株式会社)を開業しました。それから10年、社長と会長をやりましたが、古希を迎えたので若い世代に委ねてライフネット生命を退きました。

 2017年の秋に APU が日本で初めて大学の学長を公募しているという話を聞きました。僕は大学での経験がほとんどないため選ばれないと思っていましたが、選考委員会で推挙されたので2018年の1月から学長を務めています。引き受けた理由は、多様性です。選考委員会は、副学長をトップに教員5名、卒業生2名、職員代表2名の10名で構成されていますが、そのうち4名が外国人、3名が女性というダイバーシティに溢れたメンバーです。例えば、日本の大企業において指名・報酬委員会でこれほど多様性に溢れたメンバーを要しているところがあるでしょうか。このようなオープンな組織で学長を公募していることに惹かれました。


●「若者の国連」と壮大なビジョン


 他にも2つ理由があります。1つは初めて APUを訪れた時、「若者の国連」だと思ったことです。 APU は約6000名の学生が学んでいますが、そのうち約3000名は90の国や地域から集まっています。まさに「若者の国連」と言うべき、多様性の最たる場所だと思いました。

 もう1つの理由は、ビジョンの壮大さです。APU は2030年のビジョンを作っています。それは APU で学んだ人が世界の各地に散らばり、各々の持ち場を見つけて自分のやりたいことに挑戦し、APU で学んだことをベースに自ら行動して世界を変えていくというものです。国連はSDGs(持続可能な開発目標)に代表されるように2030年のビジョンを作っていますが、日本の企業でこのような壮大なビジョンを作るところがどれほどあるでしょうか。

 以上の理由から、ユニークで面白い大学だと思い応募しました。まさか選ばれるとは思っていなかったのですが、選ばれた以上は全力を挙げてチャレンジしたいと思うようになりました。2018年1月から学長を務めていますが、90の国や地域からやって来た学生と語り合うのが楽しく、毎日ワクワクドキドキな生活を営んでいます。


●東京大学小宮山宏総長との出会いと感謝


 僕は偶然ライフネット生命を創業する前に、1年と少しほど東京大学の総長室アドバイザーを務めていました。その時の学長は小宮山宏先生でしたが、小宮山先生のお話に心を惹かれました。先生は、東大がまず自ら社会に出て、「役に立たせてください。東大はこんなことができます」というように東大自らが汗をかいて初めて、社会や企業が応援してくれるようになる。東大がまず自ら社会に飛びこまなくてはいけない。その手伝いをしてほしいと言われました。とても惹かれるものがあったので、1年と少しほど東大のお手伝いをしました。

 それから約10年が経過し、僕も大学に身を置くようになりました。これも小宮山先生にお会いして大学の仕事を少しかじったことが気運になっていたと思うと、人生の巡り合わせの不思議さを感じます。小宮山先生にはしばらくお会いしておりませんが、「小宮山先生、本当にありがとうございました」とお礼を申し上げます。
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