深刻な中東情勢
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トルコ外相に聞いたサウジアラビア記者殺害事件の見解
深刻な中東情勢(1)サウジアラビア人記者殺害事件
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
イスラム国(IS)の勢力は衰退しているものの、シリアを中心に中東複合危機は深化している。さらにその情勢に深刻な影を落としているのが、サウジアラビア皇太子の関与が噂されているサウジアラビア人記者殺害事件だ。トルコ外相のコメントも参照しながら、事件の特徴、その背景にあるサウジの改革問題に言及する。(全3話中第1話)
時間:12分09秒
収録日:2018年11月29日
追加日:2019年1月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●トルコ、フランス、モロッコから見た中東複合危機


 皆さん、こんにちは。

 本日は、2018年秋の中東情勢について、少しお話ししたいと思います。

 私は2018年後半、9月9日~19日にトルコ西部を研究調査旅行でまわり、シリア難民の調査、選挙後のエルドアン大統領の国民世論における支持率の問題などを調べてきました。また、11月7日から13日にかけてはフランスとモロッコに出かけ、パリでは商工会議所における講演など、モロッコの首都ラバトではムハンマド5世大学での講演を行いました。

 この間に気がついたのは、やや離れたトルコ、そしてもっと離れたフランス、ひいてはモロッコから見た中東の、シリアを中心とした情勢が、ますます複合危機の様相を深めているということでした。

 新しい複合危機の深化は、第一にイスラム国(IS)の力が停滞し、その支配領域を縮小したものの、依然としてエジプトのシナイ半島やサヘルと呼ばれるアフリカの中央部を横切る地域においては脅威となっていることでした。確かにシリアやイラクにおいてはイスラム国の版図(支配地域)は減っていますが、シリアではまた違う質の深刻な危機が複合化しているのです。

 現在、情勢の行方はたいへん不透明かつクリティカルですが、大勢はアサド政権の優位にアラブの春が挫折し、シリアの春が消え去ろうとしているかのように思われます。まさに歴史の不条理ともいうべきものです。


●中東危機に影を落とすサウジアラビア人記者殺害事件


 これにきびすを接するようにして、在イスタンブール・サウジアラビア総領事館におけるサウジアラビア人ジャーナリストの殺害事件が、中東危機に大きく深刻な影を投じています。

 サウジアラビアの皇太子、ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)が命じた暗殺だったのか、あるいは一部のはね上がり集団が企てた殺害事件であったのか。この事件はさまざまに憶測を呼んでいますが、重要なのは、この問題をめぐってトルコ当局がサウジアラビアに対してはっきりとした対応をしていることです。

 また、この問題に対してトランプ大統領がやや中途半端な態度を取っていることもご案内のとおりです。トランプ大統領はさらに、イランに対する制裁を強化しています。イラン制裁の強化は、サウジアラビアの協力なくしては成功しえないことで、原油の輸入問題をめぐって日本においても、まことに懸念...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮
横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(5)社会的共通資本によるプラチナ社会へ
「日本に来れば未来が見える」…希望があるうちにやろう!
小宮山宏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ショパンの音楽とポーランド(8)ポーランドの苦悩と革命のエチュード
ポーランド分割、11月蜂起…革命のエチュードの真意とは?
江崎昌子
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓