日本近現代史と歴史認識~日中韓の葛藤
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歴史があって歴史認識が存在するのではない
日本近現代史と歴史認識~日中韓の葛藤(2)歴史認識問題とは何か
歴史と社会
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史認識問題について、第一次世界大戦中のアルメニア人虐殺に関するトルコとアルメニア間の歴史認識のずれを例に解説し、日韓関係についても言及する。歴史があって歴史認識が存在するのではない。重要なのは、視角によって歴史の見方は変わるということ、歴史認識も過去のみで捉えるのではなく、歴史の進歩の中で捉えていくことだと、山内昌之氏は語る。(全3話中第2話)
時間:12分20秒
収録日:2019年8月22日
追加日:2020年2月9日
≪全文≫

●トルコ・アルメニアの歴史認識問題


 前回は世界史との関係で、少し日韓、あるいは韓国の政治や歴史を考えようという視点を提示しました。第一次世界大戦中にトルコ人、オスマン帝国によって、アルメニア人がいわゆる集団移送の途中で悲劇にあった。アルメニア自身はこれを大虐殺、あるいは大惨事と呼んでいますが、2015年というのは、こういうグレート・カタストロフィーが起きた時から100年に当たっていました。

 アルメニア人は約150万人の同朋がトルコ人に虐殺されたと主張しています。トルコ共和国の政府と国民による謝罪と賠償を要求してきましたが、トルコの政府と国民はこれをがんとしてはねつけています。この点においては、東アジアの日中韓の三国と同じように、トルコとアルメニア共和国の間の現代の政治外交との関係から関連して、複雑な歴史認識の問題が起きていることは事実です。


●アルメニアとトルコにおける2015年4月の対照的な2つの式典


 アルメニアの首都・エレバンにおいては、2015年4月24日にアルメニア人の受けたジェノサイド(集団大虐殺あるいは集団的な抹殺犯罪)の犠牲者を追悼する式典が開かれました。そこに出席したのはロシアのウラジミール・プーチン大統領と当時のフランスのフランソワ・オランド大統領でした。

 他方、これに前後して大変興味深い集まりが開かれています。アルメニアが大惨事、グレート・カタストロフィーを悼んだ翌日の25日、トルコが第一次世界大戦中にガリポリ(ゲリボル)半島でイギリス本国の軍とニュージーランドとオーストラリア合同のアンザックの軍隊の上陸作戦を撃退した日なのですが、この日を記念して大きな祝典が開かれました。これはいわゆる「騎士道精神にあふれた最後の戦」として、当事者は賛美する、いわば歴史における悲劇ではありましたが、歴史における良き思い出にもなっている、その事件を追悼する行事が催されました。

 そこに参加したのは、なんとイギリスのチャールズ皇太子、あるいはオースラリアのトニー・アボット首相(当時)、そしてニュージーランドのジョン・キー首相(当時)でありました。トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領はイギリス連邦首脳らを儀式に招待し、参加してもらうことで、前の日のアルメニア人が批判するトルコのジェノサイド問題に関する国際的な批判、特にアルメニア人を中心とした世論の批判...

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