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教養とは何かを教えてくれる、おすすめの本

私のおすすめ本~「教養とは何か」を学ぶ~

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
情報・テキスト
『大人になるためのリベラルアーツ: 思考演習12題』
(石井 洋二郎著、藤垣 裕子著、東京大学出版会)
教養とは、単にさまざまな知識を身に付けることではなく、いろいろな分野の知識を結びつけて活用することである。柳川範之氏が、『大人になるためのリベラルアーツ』という本を参照して、大人の学びにおいて重要となる教養について語る。
時間:04:20
収録日:2018/10/02
追加日:2019/01/28
カテゴリー:
≪全文≫

●『大人になるためのリベラルアーツ』


 今回は、おすすめできる本として、『大人になるためのリベラルアーツ: 思考演習12題』(石井洋二郎著、藤垣裕子著、東京大学出版会)を紹介します。この本は、東京大学出版会から出ているのですが、東京大学には教養学部というものがあります。東京大学ではどの学部の学生も、1・2年生の間は、教養学部で学ぶことになっています。この教養学部の先生方が、教養とは何だろうか、教養学部で身に付けるべきことはいったい何なのだろうか、こういったことを真剣に考えて議論した結果がまとめられていて、なかなか面白い本です。

 実は、特に大人の学びにおいては、何かを一生懸命勉強することよりも、どんなふうに学んだらいいだろうか、何を考えたらいいのだろうかと、学び方のスタイルを先にきっちりと固めた方が、理解が進むと私は考えています。教養が大事だとよく言われていて、教養を身に付けようと思ってさまざまな勉強をしている方が多く見られます。そういったときの教養を身に付けるためには、いったい何のために何を学べばいいのか、あるいはどんなふうに考えていったらいいのか、そういったことを改めて振り返るきっかけを与えてくれる本だと思います。


●教養とは、さまざまな分野を結びつけて知識を活用する力


 この本の中で語られている教養は、多くの人が思っている教養とは少し違っています。一般的には、多様な知識をたくさん身に付けている人が、教養を持っている人だと考えられがちです。しかしながら、この本で語られている教養は、それとは少し違います。もちろん、何かの知識を持っていることは大事なことです。しかし、その知識をどうやって活用していくのかということに、やはり教養の重点があるというのがポイントです。

 知識の活用と言ったときの1つのポイントは、いろいろな分野のものを結びつけていくことです。他分野の人や自分とは関係のない仕事をしている人と、さまざまなコミュニケーションをとり、そこから気づきを得ていく。学問の世界では、専門分野だけに閉じてしまっていて、自分の専門分野のことだけを分かっている、こういう人がどうしても育ちがちです。またビジネスにおいても、やはり自分の専門分野のところだけを掘り下げて仕事をしがちです。

 ですが、オープンイノベーションという言葉が最近言われているように、実は、他分野の人と交流することで、あるいは情報交換をすることで、さまざまな気づきや新しい発見がある、そういうことが多々あると思います。そういう異分野の人との議論の過程で、実は教養が深められていく。こういうことを強調しているのが、この本です。

 東京大学でも実は、後期教養課程というものがあります。通常は、大学に入った1・2年生が教養学部に所属するのですが、実は、3・4年生になってある程度専門科目を学んだ後で、教養課程の科目をとってほしい。なぜなら、ある程度専門知識を身に付けた上で他分野の人と議論をする、そこから考えること、気づくことが重要だからだ。後期教養課程は、そういうコンセプトで始められました。この本はそういった点にもかなり触れているので、どういう学び方が必要なのかということを考えたい人に、おすすめします。
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