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憲法改正については国民投票の準備が不足しすぎている

憲法改正のための国民投票~準備不足の国民投票~

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
安倍政権は憲法改正を目指している。だが、最大の関門である国民投票の準備があまりに不足しすぎだ。CM、SNS、討論型世論調査……課題は山ほどある。必要な手続きは? 考えるべき論点は? イギリスやイタリアの事例に何を学ぶべきか? 10分で理解を深める「国民投票」。
時間:12:24
収録日:2019/01/11
追加日:2019/03/19
≪全文≫

●準備が不足しすぎている国民投票


 国民投票の話をします。何の国民投票かというと、憲法改正についての国民投票です。しかもサブタイトルに「準備不足の国民投票」とつけています。

 なぜそういうことを言うのかといえば、安倍首相は憲法改正をしたい。2020年までに憲法改正をできるならばしたい。現実的にはできるかどうか分かりませんけれども。

 日本の政治を見てみると、衆参で三分の二を持っている自公政権に維新(日本維新の会)と希望(希望の党)を足せば、国会での三分の二は可能です。しかしながら、最大の関門は国民投票なのです。ところが、その国民投票の準備がとても不足している、というのが私の感想です。この準備不足で憲法改正などできるのだろうかと。

 野党系の人にとっては、憲法審査会ですら動いていないのだから、これは憲法改正に行くことはないだろう、だから国民投票の準備も必要ない、という意見もあるかもしれません。逆にいえば、自民党は準備しなければいけないわけですが、そこが非常におろそかである、ということを、今日のテーマとして申し上げます。


●国民投票は制御不能な「猛獣」である


 国民投票はこわいものです。これは、憲法審査会あるいは憲法についてずっと長く指導的な立場にあった中山太郎氏が言ったと言われる言葉ですが、「国民投票というものは猛獣だ。猛獣使いはまだ現れていない」と。伝聞ですので本人がそうおっしゃったのかどうかは分かりませんが、大変こわいということは確かです。なぜか。

 イギリスのEU離脱は、国民投票で決まったわけです。あれだけ長い歴史のイギリスが、しかも議会主権の国であるイギリスが、国民投票をし、EUを離脱し、現在四苦八苦しています。そういう状態を見ると、国民投票はこわいということは分かると思います。

 イタリアは憲法改正を国民投票にかけました。レンツィ政権が国民投票にかけたのはいいのです。そこで対象となる項目は、二院制を取っているイタリアの二院の関係、それと中央政府と地方政府の関係を整理する、という非常に真っ当な改革案でした。それは国会を通りました。ですが、国民投票で議論がどこに行ったのかというと、「政権を信任するかどうか」という方に行ってしまったわけです。

 「国民投票はいいものだ」と、参加民主主義論者はずっと言い続けてきたわけですが、現在それに対してかなり疑問が出ています。参加論だけでは不十分だということです。国民が参加すればそれでいい結果が生まれるかどうかなどということは分からない。むしろ危ない、ということが言われています。

 ドイツは国民投票を憲法改正の条件にしておりません。なぜか。もちろんワイマール憲法が崩壊したナチスの時代のことがあるわけです。新憲法をつくるときだけにレファレンダム(直接投票、国民投票のこと)が必要だということで、憲法改正では実は一回も国民投票をしていません。ですから、60回近く憲法改正を行っていますが、ドイツの場合は国民投票にかけていません。そういった国による違いがあります。


●議論の活性化とポピュリズムの危険性


 もう一つ申し上げたいのが、憲法改正はどういう手続きで行われるのか、ということです。簡単にいえば、衆参両議員の三分の二の賛成で議決でき、その後、国民投票へ、となっているのですが、実はこの両院における憲法審査会の役割が極めて重要です。

 憲法審査会によって本会議に提出する。では憲法審査会はどういう形で運営されているのかというと、実は今国会でも憲法審査会は入り口で小競り合いをしているという感じでした。もう一ついえば、憲法審査会に入る前に、それぞれの政党、特に自民党の中で憲法の議論が十分整理できていたかどうかというと、まだ不十分だったような気がします。

 憲法審査会が今、議論しようとしていることが何かというと、民放連から出てきましたCM(コマーシャル)についてです。憲法改正に際して、それぞれの党あるいは団体がCMを流すでしょうけれども、それをどう規制するか。自主規制でいくのか、法的な規制なのか、という議論と、もう一つは、国民投票法を改正して環境を整理するということです。期日前投票をするかしないかとか、そういう話です。

 ですが、一番重要なのは何かというと、国民投票を行うときに、国民は議論をした方がいいのかどうか。つまり、議論を推奨するのか、議論をできるだけ少なくなるように抑制するのか、ということによって、今後の方向は大きく違うわけです。

 つまり、国民は大いに活発に憲法改正、あるいは憲法改正の項目に積極的に議論をする方がいい。そうでなければ、実は国民投票の意味はない。けれども、議論の道を開くと、そこにポピュ...
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