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デカルトの哲学的処世術
うまくいかないことは最も納得がいく視点から眺めて諦める
デカルトの哲学的処世術(3)長い修練と熟考の必要性
哲学と生き方
津崎良典(筑波大学人文社会系 教授)
人には、納得がいかない出来事というものがある。一年たっても二年たっても飲み込めないことはあるだろう。ではどうすればよいのか。デカルトは処世術の習得について、長い修練と熟考の必要性を説く。(全3話中第3話)
時間:7分22秒
収録日:2018年9月27日
追加日:2019年3月21日
収録日:2018年9月27日
追加日:2019年3月21日
≪全文≫
●うまくいかないときは最も納得がいく視点から眺めて諦める
では、諦めるということで、自分のやった行動の結果にどうやって接していくか。実はここに、デカルトの処世術は私たちが毎日穏やかに暮らすためのものである、というテーマにつながってくる大事な論点が出てきます。
ダイヤモンドのような肉体をもつことは不可能である。翼をもつことは不可能である。では一体何が可能なのか。それは自分の思想や欲望のほうを変えることである。ここまでよろしいですね。ダイヤモンドの肉体はもてないので、不可能と考える。そう考えることは可能である。ダイヤモンドの肉体はもてないと考えた結果、諦める。それは可能なことで、私たちには諦めることはできるわけです。
そうなってくると、諦め方が問題になってきます。どうやって諦めたらよいか。つまり、自分にとって最も納得いく視点からうまくいかなかったことを眺めて、自分を慰めるのです。いろいろな自分の納得のさせ方があります。いろいろな見方があります。ダイヤモンドの肉体をもてなかったその事実を前にして、湧き起こってきたさまざまな感情をコントロールするうえで、さまざまな視点から、ダイヤモンドの肉体をもつことは無理だった、不可能だったという事実に、私たちはアプローチすることができます。
どうして自分はそのように生まれてしまったのかとも思えるし、ダイヤモンドのようなキラキラした肉体よりは普通の身体のほうがよいと思ったり、あるいはダイヤモンドは固いけど、実は案外簡単に燃えてしまうものだと自分を慰めてみたりと、いろいろな仕方で慰めることができ、いろいろな理由を自分でつくることができるわけです。ダイヤモンドの肉体をもてなかったときの諦め方として。
その選択肢はたくさんあるわけですから、自分の一番好きな、納得のいく選択肢で自分を慰めよ、とデカルトは言っているのです。最も納得がいくというのは、実は自分にとって穏健な意見です。誰かが言っているからというものではなく、最も好都合な、或る角度から見て「最も堪えやすい」角度から自分が取った行動、あるいは自分に降りかかってきた行動の結果にアプローチしていく、ということです。
●毎日を最も穏やかに過ごすやり方
もう一度最初か...
●うまくいかないときは最も納得がいく視点から眺めて諦める
では、諦めるということで、自分のやった行動の結果にどうやって接していくか。実はここに、デカルトの処世術は私たちが毎日穏やかに暮らすためのものである、というテーマにつながってくる大事な論点が出てきます。
ダイヤモンドのような肉体をもつことは不可能である。翼をもつことは不可能である。では一体何が可能なのか。それは自分の思想や欲望のほうを変えることである。ここまでよろしいですね。ダイヤモンドの肉体はもてないので、不可能と考える。そう考えることは可能である。ダイヤモンドの肉体はもてないと考えた結果、諦める。それは可能なことで、私たちには諦めることはできるわけです。
そうなってくると、諦め方が問題になってきます。どうやって諦めたらよいか。つまり、自分にとって最も納得いく視点からうまくいかなかったことを眺めて、自分を慰めるのです。いろいろな自分の納得のさせ方があります。いろいろな見方があります。ダイヤモンドの肉体をもてなかったその事実を前にして、湧き起こってきたさまざまな感情をコントロールするうえで、さまざまな視点から、ダイヤモンドの肉体をもつことは無理だった、不可能だったという事実に、私たちはアプローチすることができます。
どうして自分はそのように生まれてしまったのかとも思えるし、ダイヤモンドのようなキラキラした肉体よりは普通の身体のほうがよいと思ったり、あるいはダイヤモンドは固いけど、実は案外簡単に燃えてしまうものだと自分を慰めてみたりと、いろいろな仕方で慰めることができ、いろいろな理由を自分でつくることができるわけです。ダイヤモンドの肉体をもてなかったときの諦め方として。
その選択肢はたくさんあるわけですから、自分の一番好きな、納得のいく選択肢で自分を慰めよ、とデカルトは言っているのです。最も納得がいくというのは、実は自分にとって穏健な意見です。誰かが言っているからというものではなく、最も好都合な、或る角度から見て「最も堪えやすい」角度から自分が取った行動、あるいは自分に降りかかってきた行動の結果にアプローチしていく、ということです。
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