デカルトの哲学的処世術
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
うまくいかないことは最も納得がいく視点から眺めて諦める
デカルトの哲学的処世術(3)長い修練と熟考の必要性
津崎良典(筑波大学人文社会系 教授)
人には、納得がいかない出来事というものがある。一年たっても二年たっても飲み込めないことはあるだろう。ではどうすればよいのか。デカルトは処世術の習得について、長い修練と熟考の必要性を説く。(全3話中第3話)
時間:7分22秒
収録日:2018年9月27日
追加日:2019年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●うまくいかないときは最も納得がいく視点から眺めて諦める


 では、諦めるということで、自分のやった行動の結果にどうやって接していくか。実はここに、デカルトの処世術は私たちが毎日穏やかに暮らすためのものである、というテーマにつながってくる大事な論点が出てきます。

 ダイヤモンドのような肉体をもつことは不可能である。翼をもつことは不可能である。では一体何が可能なのか。それは自分の思想や欲望のほうを変えることである。ここまでよろしいですね。ダイヤモンドの肉体はもてないので、不可能と考える。そう考えることは可能である。ダイヤモンドの肉体はもてないと考えた結果、諦める。それは可能なことで、私たちには諦めることはできるわけです。

 そうなってくると、諦め方が問題になってきます。どうやって諦めたらよいか。つまり、自分にとって最も納得いく視点からうまくいかなかったことを眺めて、自分を慰めるのです。いろいろな自分の納得のさせ方があります。いろいろな見方があります。ダイヤモンドの肉体をもてなかったその事実を前にして、湧き起こってきたさまざまな感情をコントロールするうえで、さまざまな視点から、ダイヤモンドの肉体をもつことは無理だった、不可能だったという事実に、私たちはアプローチすることができます。

 どうして自分はそのように生まれてしまったのかとも思えるし、ダイヤモンドのようなキラキラした肉体よりは普通の身体のほうがよいと思ったり、あるいはダイヤモンドは固いけど、実は案外簡単に燃えてしまうものだと自分を慰めてみたりと、いろいろな仕方で慰めることができ、いろいろな理由を自分でつくることができるわけです。ダイヤモンドの肉体をもてなかったときの諦め方として。

 その選択肢はたくさんあるわけですから、自分の一番好きな、納得のいく選択肢で自分を慰めよ、とデカルトは言っているのです。最も納得がいくというのは、実は自分にとって穏健な意見です。誰かが言っているからというものではなく、最も好都合な、或る角度から見て「最も堪えやすい」角度から自分が取った行動、あるいは自分に降りかかってきた行動の結果にアプローチしていく、ということです。


●毎日を最も穏やかに過ごすやり方


 もう一度最初か...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎