デカルトの哲学的処世術
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
政治や教育の改革よりも、自分の思想を改革する
デカルトの哲学的処世術(1)『方法序説』の巧みな比喩
津崎良典(筑波大学人文社会系 教授)
『方法序説』第二部冒頭で、デカルトは「自分の思想を改革する」と述べている。それは時として自分や社会の偏見を疑うことにもなり、そうすると人間関係に波風が立つ。このジレンマをどのように解決すればよいのか。津崎良典氏は、デカルトの「処世術」に着目する。(全3話中第1話)
時間:9分49秒
収録日:2018年9月27日
追加日:2019年3月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●哲学書らしからぬ『方法序説』の巧みな比喩


 フランス哲学を代表するデカルトの代表作が『方法序説』です。1637年に出た、彼の最初の本です。この『方法序説』ですが、実は哲学書という感じがしません。哲学書のイメージにもよりますが、哲学書というと、難しくて簡単には理解できないような書き方をしているというイメージが私にはあります。『方法序説』は、その限りで言えば、全く哲学書らしくないと言えます。どうしてか。

 その理由の一つは、巧みな比喩です。これはもう文学書の範疇に入れてしまってもよいのではないかと思わせるほど、比喩がふんだんに使われています。その意味では、読んでいて非常に楽しい本で、一般に流布している哲学書というイメージがしません。今日はその比喩を熟読玩味してみたいと思います。

 さて、デカルトは十代の時、イエズス会という修道会の運営する学校にいました。イエズス会という修道会について、ご存じの方もいると思います。なぜならば、日本にキリスト教をもってきたフランシスコ・ザビエルがイエズス会の所属だったからです。このイエズス会という修道会がフランスで運営していた超エリート校、本当のエリートを育てる学校だったので、デカルトは非常によく勉強しました。英才教育を徹底的に授けられたわけですが、その成果は惨めでした。でも彼は頑張ったのです。彼が怠けていたからではありません。なぜなのか。

 本当に確実だと思えるものには、全然学校では出会えなかった。世間でも出会えなかった。そればかりか自分は、実は非常に多くの偏見に深く絡め取られているということに気付いた。そうデカルトは述べています。

 では一体、彼はどうするか。早速、『方法序説』第二部冒頭を読んでみたいと思います。なかなか興味深いことが述べられています。


●学校や政治の改革よりも、自分の思想を改革する


 「一個人が国家を、その根底からすべて変えたり、再建するために転覆したりして改革しようとすることは、まったく理に反しているし、さらに学問全体の仕組みや、これを教授するために学校で確立している秩序を改革しようとするのもまったく理に反している。けれども、私がこれまで受け容れ信じてきた見解のすべてに関して言うなら、自分の信念から一...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高