デカルトの著作に学ぶ
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『方法序説』を上回るデカルトの破格な著作
デカルトの著作に学ぶ(2)『省察』『哲学原理』『情念論』
津崎良典(筑波大学人文社会系 教授)
デカルトは生前、『方法序説』以外にも『省察』『哲学原理』『情念論』の三冊を公刊している。いずれもデカルトを理解するうえでは重要な著作ばかりだが、それぞれ誰に向けて、そしてどのように書かれているのか。(全2話中第2話)
時間:13分17秒
収録日:2018年9月27日
追加日:2019年2月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●『省察』は黙想である


 次に、彼は〔『方法序説』の刊行から〕四年後、1641年にパリで『省察』という本を出します。ここにデカルト著作集をもってきましたが、この第二巻にその全てが費やされています。

 「省察」というタイトルですが、高校の倫理の教科書には「しょうさつ」という振り仮名がふられている場合もあるので、「しょうさつ」とご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、私たち専門家のあいだでは「せいさつ」と呼んでいます。

 省察という日本語を当てられた原語は、ラテン語で言うと「meditatio」、フランス語だと「méditation」、英語だと「meditation」ですが、そもそもキリスト教の言葉です。「meditation」をキリスト教用語として日本語に訳す場合、「黙想」となります。これは、或る特殊な精神の使い方を意味しています。

 第一に、一貫して持続する注意作用を前提としています。何かを注意深くずっと考え続けることです。継続した精神の使い方ということがまず、黙想ないしは省察という単語に込められています。

 第二に、或る一つの考察対象にいろいろな角度から迫っていくことです。つまり、一つの考察で終えるのではなく、その一つの考察対象にいろいろな角度から迫っていくということです。

 第三に、考察対象と深い関係を結ぶことです。単に表面的に考えるのではなく、考察対象に深く入り込んでいくということです。

 そういった精神の使い方をする、あるいはそういった精神の使われ方をしているとき、黙想や省察という日本語が使われます。それが英語で言う「meditation」になるわけです。


●宗教的な要素を換骨奪胎しつつも宗教書の体裁に倣った小さな本


 さて、黙想はキリスト教用語であると先ほど申し上げました。では具体的には一体何が考察対象になるかというと、いくつかありますが、キリスト教の中で最も理解することが難しいと言われている「三位一体」の考え方です。三位一体とは、父なる神と子なるイエス、そして精霊というこの三つが一体だという考え方です。やはり三つのものが一緒というのは理解しにくい。そこを頑張って理解するために、「このような精神の使い方をしてください」というのが、先ほどの黙想という日本語のもとになったヨーロッパ語に込められています。

 デカルトは、なんとこれを換...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り
為末大
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理

人気の講義ランキングTOP10
こどもと学ぶ戦争と平和(3)「小さな外交官」と少年兵の問題
外国が攻めてきたらどうすればいい?戦争と少年兵の問題
小原雅博
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
プロセスこそが貴重…AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
齋藤純一
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(4)新規事業成功のポイント
新規ビジネスの立ち上げ方、伸ばし方、見切り方の具体例
水野道訓
おもしろき『法華経』の世界(9)「如来寿量品」と三身論
仏の寿命は無量で久遠に実在する…「如来寿量品」の神秘
鎌田東二