土砂災害と防災
日本で頻繁に土砂災害が起こる理由とは?
土砂災害と防災(1)なぜ土砂災害は多発するのか
科学と技術
池谷浩(山梨県富士山科学研究所 客員研究員/農学博士)
平成30(2018)年に全国で起きた土砂災害は3,459件で、国土交通省が集計を開始した昭和57(1982)年以来過去最多と発表された。この数字は例年の平均件数(1,015)の約3.4倍を数えるもので、死者・行方不明者数も集計開始以降3位を記録している。なぜこれほど土砂災害は多発するのか。日本の国土と気象の特徴から考えていく。(全3話中第1話)
時間:9分35秒
収録日:2019年3月13日
追加日:2019年5月10日
収録日:2019年3月13日
追加日:2019年5月10日
≪全文≫
●土石流によって人間社会に被害を与えることが土砂災害
砂防・地すべり技術センターの池谷浩です。今日は、なぜ土砂災害は多発するかについてお話をします。最近、地震や大雨のたびに、災害とりわけ土砂災害が話題になります。そこで、土砂災害とはどのような災害なのか、また、なぜ多発するかについて考えてみたいと思います。
まず最初に、災害とはどのようなものかを考えてみましょう。災害とは、異常な自然現象によって人間の社会生活や人命の受ける被害であると定義をすると、以下のような図で示すことができます。
一方に原因となる自然現象があり、他方に人間の場があります。自然現象が人間の生活する場で被害をもたらすことが災害だといわれています。自然現象が人間の生活する場で被害を及ぼさない場合は、もちろん災害とはいいません。
土砂災害という視点で見ると、自然現象は土石流や地すべり、がけ崩れなど、土砂の移動現象を示します。すなわち、土石流が流れていって人間社会に被害を与えることが土砂災害なのです。
●豪雨で大きく土砂災害が広がった福岡県朝倉市
先ほどの図からいくつかのことが分かります。一つ目に、この災害が過去のものであれば、そこからいろいろなことが学べます。人間社会では、どのような社会の場で災害が起こったのか、そのときの被害状況はどのようなものだったかを知ることができます。一方、災害は自然現象の方にもラップしていますので、どのような自然現象だったのか、そのときの発生条件はどのようなものだったかが分かります。これらの条件は、今後の防災対策に有意義な情報を与えてくれます。
もう一つ重要なことは、円の大きさです。この円の大きさは固定されたものではなく、常に変化しています。土砂災害を例に、この円の変化を見てみましょう。
平成29(2017)年に九州北部豪雨がありました。この時の土砂災害では、九州北部にある福岡県朝倉市の観測地点で、実に24時間829ミリという雨が降りました。東京で1年間に降る雨(約1700ミリ)のほぼ半分が、たった24時間で降ってしまったことになります。
これだけ多量の雨が降ると、山は崩れ、土砂が流出し、山に生えていた木が流れ出します。そのために朝倉市では多くのところで土砂災害や流木災害が起こりました。結果的に災害を表す円は...
●土石流によって人間社会に被害を与えることが土砂災害
砂防・地すべり技術センターの池谷浩です。今日は、なぜ土砂災害は多発するかについてお話をします。最近、地震や大雨のたびに、災害とりわけ土砂災害が話題になります。そこで、土砂災害とはどのような災害なのか、また、なぜ多発するかについて考えてみたいと思います。
まず最初に、災害とはどのようなものかを考えてみましょう。災害とは、異常な自然現象によって人間の社会生活や人命の受ける被害であると定義をすると、以下のような図で示すことができます。
一方に原因となる自然現象があり、他方に人間の場があります。自然現象が人間の生活する場で被害をもたらすことが災害だといわれています。自然現象が人間の生活する場で被害を及ぼさない場合は、もちろん災害とはいいません。
土砂災害という視点で見ると、自然現象は土石流や地すべり、がけ崩れなど、土砂の移動現象を示します。すなわち、土石流が流れていって人間社会に被害を与えることが土砂災害なのです。
●豪雨で大きく土砂災害が広がった福岡県朝倉市
先ほどの図からいくつかのことが分かります。一つ目に、この災害が過去のものであれば、そこからいろいろなことが学べます。人間社会では、どのような社会の場で災害が起こったのか、そのときの被害状況はどのようなものだったかを知ることができます。一方、災害は自然現象の方にもラップしていますので、どのような自然現象だったのか、そのときの発生条件はどのようなものだったかが分かります。これらの条件は、今後の防災対策に有意義な情報を与えてくれます。
もう一つ重要なことは、円の大きさです。この円の大きさは固定されたものではなく、常に変化しています。土砂災害を例に、この円の変化を見てみましょう。
平成29(2017)年に九州北部豪雨がありました。この時の土砂災害では、九州北部にある福岡県朝倉市の観測地点で、実に24時間829ミリという雨が降りました。東京で1年間に降る雨(約1700ミリ)のほぼ半分が、たった24時間で降ってしまったことになります。
これだけ多量の雨が降ると、山は崩れ、土砂が流出し、山に生えていた木が流れ出します。そのために朝倉市では多くのところで土砂災害や流木災害が起こりました。結果的に災害を表す円は...
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