土砂災害と防災
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土砂災害は「まさか」という場所で起こりうる
土砂災害と防災(2)土砂災害の実態
科学と技術
池谷浩(山梨県富士山科学研究所 客員研究員/農学博士)
土砂災害の特徴は、多様な原因によって多様な事象が発生することである。近年では、流木により川の流れが変わり、それまで想定しなかった区域がハザードゾーンになる例も多い。社会的側面として、高齢化の進行も災害を拡大する要因となっている。第2話では、近年の事例を中心に土砂災害の種類と実態を見ていく。(全3話中第2話)
時間:9分01秒
収録日:2019年3月13日
追加日:2019年5月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●深層崩壊と表層崩壊


 砂防・地すべり技術センターの池谷浩です。今日は、悲惨な被害が生ずる土砂災害の実態についてお話をします。家を破壊し、人の命を奪っていく土砂災害は、毎年全国では1千件近く発生しているという実態があります。そこで、土砂災害の特徴、つまり土砂の移動実態の特徴について、皆さんで考えてみましょう。

 まず特徴として挙げられるのは、多様な原因によって多様な事象が発生することです。原因としては、大雨、地震、火山噴火、融雪(雪解け)などがあります。これらの原因によって発生する土砂の移動現象として、土石流、地すべり、がけ崩れ、火山地帯では火砕流、火山泥流、溶岩流などがあります。また、よく「山崩れ」といいますが、一般的には「崩壊」と呼んでいます。この崩壊にも、深層崩壊や表層崩壊があります。

 深層崩壊とは非常に大きな崩壊のことです。例えば、平成23(2011)年9月に紀伊半島で発生した深層崩壊では、長さ1100メートル、深さは平均して30~50メートルもありました。

 一方、表層崩壊ですが、層は厚くありません。平成25(2013)年、伊豆大島で発生した土石流では、厚さ50センチ程度の表層崩壊が土石流を発生させました。大きな崩壊も、浅い崩壊も、大きな被害を与えます。


●「まさか」という場で土砂災害の起こった西日本豪雨


 多くの原因と多くの現象が発生するのが一つの特徴ですが、厳しいのは、これらの現象が突発的に発生することです。事前の予知がなかなか難しいのも、土砂災害の特徴といえるかと思います。

 最近でも、思わぬところで思わぬ災害が起こっている例があります。平成30(2018)年の西日本豪雨災害の時に広島県呉市で起こった災害は、国土交通省が「土砂・洪水氾濫」災害と名付けるほど、新たな災害として有名になりました。

 一般的に土砂災害は川の上流域で発生しやすいため、堆積するのも比較的上流に土砂が溜まります。下流に行くほど水の災害になり、洪水氾濫が起こるのが一般的です。

 呉市の場合は、海に近い勾配のゆるいところまで、川底に土砂が堆積して川を埋めてしまいました。本来ならそこで水があふれ出て洪水になるのですが、その時は流れ出た土砂が下流に堆積しました。その量も、1~2メートルという大変な量...

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