専門横断的な研究機構を作る上で重要なのは、社会的な視点と学術的な視点を生かすことである。そこで明らかなのは、日本では議論文化が足りないため、分野間連携が少ないということである。状況を改善するためには、学生の力を有効活用し、分野間の触媒としての役割や地域での活躍を支援することである。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
≪全文≫
●社会的側面と学術的側面の掛け算が連携事業の契機となる
―― (小宮山)先生みたいな人がいて、インターフェイスの1枚の絵を描いたわけですよね。そのインターフェイスに合わせて、今の既存の組織に横串を刺していく。これってすごく重要ですよね。
小宮山 重要ですよね。
―― その1枚の絵が見える人がいるかどうかって、ものすごく重要ですよね。
小宮山 それが、私が言っている全体像です。
―― 先生がおっしゃるように、サスティナビリティなどについての1枚の絵があり、それを実現するためには、どこと、どこと、どこを組み合わせればワークするのか。それって、それが見える人が総長をやっている間じゃないとできないですよね。
小宮山 実は、工学部の時もやりました。たぶん日本では初めてだと思うんだけど、医工連携のセンターを作ったんですよ。工学部の企画委員会というのがあって、そこで工学部の先生が400人くらいいるんですが、「何を研究しているのか」、ということを調べたのです。そうすると、2割くらいが医療に関係しているんですよ。機械が専門の人でも血流と体温の関係をやっている、とか。それだったら、医学部と連携しないといけないな、と思った。
なぜかと言うと、医学部の先生と工学部の先生が1対1でやると、なかなかできない。そこで、「組織でやらないといけない」、と思って、医工連携のセンターを作ったんですよ。これなんか本当に成功です。
―― それって先生が、実は工学部の先生のうち、2割は身体に関することをやっている、というデータに基づいてやったわけですね。
小宮山 そうですね。それと社会的知識ですね。やっぱり掛け算です。社会的な話と、学術的な話とのですね。
―― 人間学と経験値があって、そこの二つが分かっている人がいないと、これは上手くワークしないわけですね。
●日本に足りないのは議論文化である
小宮山 そうですね。私がそういうことを分かるようになるためには、人が接触する、ということが不可欠なんですね。だから、やっぱり日本で、欧米になかなか勝てないところがあるとすると、今、私とあなたがやっているような議論文化ですよ。
ギリシャ以来の議論の文化です。その文化が日本にもほしいですね。日本の場合、議論すると、「あいつは生意気だ」と言われるでしょ。場合によっては、「あいつは俺の意見に反対した」と言...