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武士道の最も大きな思想は「Amor Fati(運命への愛)」

武士道の神髄(3)いかに自分の命を使うかが武士道

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
武士道とは他人のために命を捧げること。戦国時代に宣教師によってもたらされたキリスト教もそうで、だから武士の間でいっきに広がった。命を懸けられる対象は、崇高なものだけである。命懸けをやってみればわかるけれども、自分のために命を懸けることはできない。だからこそ、今の自殺は自己中心的で、人間の死ではなく動物の死と同じだといえる。そもそも青春の苦悩とは、何に命を捧げるか探すことであった。それがわかり、実践して死んだのなら早死にでも不幸ではない。武士道とは自分の命をどう使い、どう捨てるかということなのだ(全10話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:18
収録日:2019/11/26
追加日:2020/01/31
カテゴリー:
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≪全文≫

●崇高なものにわが身を捧げる


執行 僕は全部体当たりしているから、相手も本音が出るのです。だから僕のことを嫌いな人は、ごまんといます。それは仕方がないことで、それを覚悟して体当たりを繰り返していたら、自分の運命がわかります。

 運命がわかれば、僕を見てもわかるとおり、死ぬ気で体当たりしてもなかなか死ねません。これは結果論ですが、社会というのは、けっこううまくいくものです。僕はあらゆる人に嫌われましたが、何もまずいことはありませんでした。だからほかの人も、自分の運命をつかんで運命のとおりにやれば、必ずうまくいくということは言えます。ただし運命でなければダメで、ここが難しいところです。

―― ここが難しいですね。

執行 運命は、体当たりをしないと出てきません。だから僕は武士道の一番大きい思想とは「Amor Fati」だと思っています。ラテン語で「運命への愛」という意味です。有名な哲学用語で、マルクス・アウレリウスの『自省録』に出てきます。武士道が好きなフランスの思想家モーリス・パンゲが「日本の武士道とは運命への愛」だと語っていて、僕はこの言葉が非常に気に入っています。僕は自分の武士道を「運命への愛」と、ずっと言い続けています。

 自己の運命を愛さなければ、武士道は貫徹できません。自己の運命を愛すると、自分の信ずる思想のために腹も切れるし、死ぬこともできるのです。死ぬことができるというのは、自分を愛しているということです。愛さなければ、切腹なんてできません。武士である自己を愛しているから、自分の腹を切れるのです。

―― そこが今の幸福論とは違う幸福論ですね。現代風の幸福論ではない幸福論。

執行 もちろんそうです。現代の幸福論は、幸福論ではありません。幸福論で一番有名なのは、西洋だと『アミエルの日記』(フレデリック・アミエル著)や、カール・ヒルティの『幸福論』があります。いずれも僕と同じ意見で、昔に書かれたのでキリスト教に基づいています。キリスト教信仰に基づき、キリスト教のために命を捧げ、キリスト教信仰のために他人に尽くし、他人のために自分の命を捧げるという人生論です。

 とくに『幸福論』がそうで、武士道と一緒です。だから僕はカール・ヒルティも大好きです。僕がキリスト教の話をよくするのは、昔のキリスト教信仰が非常に武士道的だからです。

―― キリスト教は、...
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