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「過去の宿命」を愛さないと「次の運命」も愛せない

武士道の神髄(5)「縁」こそが運命である

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
その仕事が与えられたのは「縁」があるから。「縁」を大事に考えるなら、どんな仕事も大切になる。かつての武士たちも主君は選べなかった。すべては縁で、縁が運命なのだ。日本人に生まれたのも縁で、それを否定すればくだらない人間で一生を終える。仕事でも何でも同じこと。武士道は武士だけのものではなく、日本人は商家も農家もみな武士道で生きてきた。その武士にしても、『葉隠』が説く武士道とは、武士たちが「悪党」と呼ばれていた頃の武士道を懐かしんでまとめられたものだ。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:48
収録日:2019/11/26
追加日:2020/02/14
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≪全文≫

●自分の宿命を「ダメ」と思う人は、もう一生「ダメ」だ


―― どんなに嫌な仕事でも全力で当たっていかないと、道は開かないのですね。
執行 「嫌なことでも」と言うと、ちょっと語弊があります。「嫌なことをやる」と思っていること自体が、「自分の運命を愛していない」ということになります。僕の場合、嫌だと思わないのです。そこは少し違うように思います。

―― 難しいところですね。

執行 僕はわりと子供の頃から運命が好きだったので、自分に与えられたことには何かの縁があると思っていました。何かの謂れがあって、そうなっているのだろうと。だから、運命にも当たる。最初から「嫌」と思ってやったら、たぶんわかりません。僕に言わせれば「嫌な仕事をやっている」などと言うこと自体、傲慢で生意気な考えです。

―― それが来たことに、ある意味、「縁」を感じる。

執行 そうです。縁と思って大切にする。小賢しい生き方がダメというのも、そこです。例えば友達の紹介で入ったとか、親のツテで入ったというのは、縁です。昔の人は、そういう縁を大切にしました。だから縁を大切にして体当たりすると、運命がわかるのです。これはもう絶対といえます。逆に好き嫌いで考えたらダメかもしれません。

―― 確かに武士の世界でも、その主君が好きかどうかよりも縁です。

執行 全部が縁です。

―― どの時代のどういう藩主の下で生まれるかは、自分では選べないわけですから。ある意味、ここで生まれたのが自分の運命。佐賀藩なのか長州藩なのか薩摩藩なのか、まったくわからないけれども、たまたま佐賀藩に生まれた。

執行 今であれば、日本人なら日本人に生まれたということも、全部そうで、縁です。縁が運命です。運命というのは、大きく言えば縁です。われわれが日本人に生まれたのも、一つの縁です。だから日本人に生まれたのなら、日本人として立派な人間になろうとしなければならない。日本人以外、なれませんから。日本人に生まれたのに、「フランス人に生まれればよかった」などと言ってフランス・コンプレックスを持って生きていれば、くだらない人間で一生終わりです。それが小さい形でも、全部同じということです。

―― 確かにそうですね。日本にいて「俺はフランス人になりたい」と、一生、思って生きているか。

執行 だから『葉隠』的な生き方をしたいと思う場合に、僕があらゆる人...
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