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「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」という究極の覚悟

武士道の神髄(10)『葉隠』が説く真の平等思想

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
『葉隠』にある「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」という言葉。この信念があるからこそ、自分に真の誇りも持てるし、今の自分の失敗も素直に認められる。どれほど偉い歴史上の人物も、同じ人間である以上、挑戦すれば誰でも何にでもなることができるのだと、思い切ることができるか否か。逆に、「自分には才能がない」と自分で言ってしまったら、そこで終わってしまうのだ。この思想は、日本人の一番素晴らしいところであろう。偽物ではない、真の平等思想、本当のヒューマニズムが武士道にはあるのである。(全10話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:00
収録日:2019/11/26
追加日:2020/03/20
カテゴリー:
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≪全文≫

●「僕は、このへんでいい」と言ったら人生は終わる


―― 「葉隠十戒」の第十戒は「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」ですね。

執行 これは武士道の根本の中の根本で、僕の人生観の中でも最大のものの一つです。僕は死ぬほど本を読んできて、読書家として知られています。僕がそれほど本を読めた理由は、どんな歴史上のすごい人でも、自分と同じ人間なのだから、誰が書いた本でも自分が体得できないものは絶対にないという信念があるからです。そういう気持ちで読んできました。だから僕は読んだ本が全部、身についているほうです。それはそういう気持ちで読んだからで、その始まりが今の言葉です。

 ここが武士道の一番好きなところで、僕が言う真の平等思想、真の人間性、真のヒューマニズムです。

 武士道とは精神性から見て、本当に男らしく生きたか生きないか、女性なら女らしく生きたか生きないか、それだけを問うものです。武士道の前では天皇だろうが殿様だろうが、奉行だろうがヒラだろうが、全員平等です。将軍でも武士道の考えからして卑怯な真似をすれば、単なる卑怯者です。百姓でも武士道に憧れて生きれば、近藤勇や土方歳三を見ればわかるように、本当の武士として尊敬されます。それが武士道です。ここが武士道の一番素晴らしいところです。

 だから、どんな人間よりも上だし、どんな人間よりも下ではない。絶対価値なのです。この思想を堅持して、僕はあらゆるものの自己責任を感じることができました。だから僕は自分よりも能力があると思う人はいないし、自分が羨む人も一人もいません。「誰にでも、なりたければなれる」という考えです。僕はたまたま人間で肉体が1つしかないから、今こういう職業をやっているけれど、映画スターになりたければ、なれると思っています。文学者になれば、世界的な文学者にもなれると思っています。「同じ人間に生まれて、自分にできないことは、この世にはない」と思っていますから。

―― そこが、この前にうかがった「失敗をどう認めるか」とか「自分の実力をどう評価するか」というところに、すごく結びつくと思います。

執行 たぶん、そうです。

―― 自分はやれば、できる。

執行 できます。

―― この言葉のとおりに、「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」と思っていれば、今の段階で間違いを認めても、それはいいわけですね。

執行 もちろん...
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