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武士の「切腹」は「復活」するためのものだった

武士道の神髄(8)切腹とは「死ぬこと」ではない

執行草舟
実業家/著述家/歌人
情報・テキスト
かつて武士は、失敗をしたときには「切腹」をして責任を取った。だが、それは、かつての武士の社会では、切腹は名誉な行為であり、切腹をすることで家の存続が許され、子供が跡を継げるからであった。つまり、切腹とは「死ぬこと」ではなく、「復活」のためのものだったのである。そう考えれば、そのような仕組みがない現代では、「責任を取って自殺する」などということは、ただの「逃げ」である。現代における「切腹」とは、「本当に自分の失敗を認めて、もう一回やり直すこと」である。実は現代人にとって、これはかつての切腹よりも困難なことかもしれない。(全10話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:36
収録日:2019/11/26
追加日:2020/03/06
キーワード:
≪全文≫

●いまの自殺は「責任の取り方」ではなく「逃げ」


―― 先ほど「責任を取るのは自分」という話が出ましたが、間違えたときに責任から逃げてしまう人もいれば、さらに突っ込む人もいるなど、いろいろなタイプがいます。武士道的に考えた場合、どのような責任の取り方を覚悟すればいいでしょう。

執行 仕事の失敗ですか?

―― 仕事で失敗してしまった。家族ももちろん、何かで失敗があるでしょう。主には何かうまくいかなかったとか、失敗してしまったときに、どうすればいいか。

執行 失敗を認めて、もう一回やり直せば、責任を取ったということです。これはある意味では、死ぬよりつらいことです。失敗を認める人に、僕はほとんど会ったことがありません。本当に失敗を認めて、失敗を反省して、改めて、もう一回正しい形でやり直す。これが責任の取り方としては一番大きいものです。昔の切腹もそうです。切腹は「死ぬこと」だと思ったら大間違いです。

―― そこが一番難しいところですね。

執行 これをみんな、わかっていません。昔は武士の家柄というのは、延々と続きます。後継ぎがいて、ある意味では永遠です。後継ぎが武士としてやり直すために、親は腹を切るのです。

―― なるほど、わが身を殺して……。

執行 そうして武士道を立てる。だから武士道の切腹とは、「死ぬこと」ではないのです。切腹をすることによって江戸時代では家が存続して、もう一回子供が武士としてやり直せる。これが本当の「失敗を認めてやり直す」ということです。それが責任の取り方です。切腹は武士にとって一番の権威でしたから、だから本当に殺されるときには切腹させてもらえません。

―― そうですね。縛り首や斬首などということになってしまいますね。

執行 それが「殺された」ということです。切腹して自分で死ぬというのは、死ぬのではなく、失敗を認めてもう一回やり直すことです。復活なのです。切腹とは復活のために切ることです。肉体としての自分は死にますが、昔の武士の見方は、子供は自分と同じというものです。

―― 家がずっと続いていくことの重みですね。

執行 実際、ついこのあいだ、民主主義が発展するまでは、親の借金も子供の借金でした。親子は一心同体だからです。自分が責任を取って腹を切れば、子供がそれを受けた形で、もう一回やらせてもらえる。これが昔の武士社会のシステムです。切腹は、死ぬことではない。

―― それ(切腹)があって子供が後を継げる。子供に正しい命が伝わる。

執行 昔の武士社会はそうでした。

―― 武士社会の決まりですよね。その決まりがあるからこその切腹だということですね。

執行 だから僕はいつも死ぬ気で仕事も当たっていますが、どういう希望を持って生きているかというと、志を継いでもらうことです。僕は武士道的な姿勢でずっと生きて、死ぬときもそのように死ぬ気でいますが、今までは死ねず、まだ生きています。しかし、いつか死んだときに、志を継いでくれる人がいると思っています。今のところ、そう言ってくれる人はたくさんいます。それは、僕がこのように生きているからです。僕が卑怯奇天烈な生き方していたら、僕の後を継ぎたい人はいないでしょう。

―― まさに魅力がある生き方をしているかどうかですね。

執行 武士道は美学だから、魅力あるに決まっています。だから僕の後を継ぎたい、僕の思想を継ぎたいという人は、ごまんといます。家族だけでなく、社員や、仕事と全然関係ない僕のファンの人もいます。僕がこのまま死ねば、彼らが僕の志をどんどん継いでいきます。これが僕の責任の取り方です。

―― 志を継ぐ。

執行 要はそういうことではないでしょうか、失敗の責任の取り方とは。やり直す。

―― 現代的に置き換えると、死んで責任を取るという簡単な話ではないということですね。

執行 今の自殺は、責任の取り方ではありません。あれは「逃げ」です。切腹や命懸けといったものと一緒にされたら困ります。

―― そこは意外と取っ散らかってしまっている人がいるかもしれませんね。

執行 今はとくに自殺が多いから。昔で言えば三島由紀夫までのような、自分の信念による自決とは違います。

―― 武士の場合、本当に愛する家族がいて、自分も死にたくないけれど、家族のためにあえてわが身を殺す。

執行 死ぬことによって武士の面目が立てば、江戸時代だと家禄はそのまま子供が継げます。だから、あの時代の武士はそういう責任の取り方しましたが、今なら、やり直しができる形ですから、一回反省してきちんとやり直せば、責任を取れるということです。ただ僕が見ての範囲で、自分の失敗を本当に失敗だと認めて、やり直している人は、ほとんどいません。


●失敗を失敗として認める難しさ


―― そこがまさに、現代的に言う「切腹」...
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