日本近現代史と歴史認識~日中韓の葛藤
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歴史を政治外交の武器にしようとする手法へどう対応すべきか
日本近現代史と歴史認識~日中韓の葛藤(3)歴史を見る視点の違い
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
日中歴史共同研究に参加した山内昌之氏は、南京事件の死者数に関する日中の見方の食い違いを取り上げ、歴史認識というランプの当て方で歴史の見方が変わってしまうこと、またそうした見方を政治外交の手段としてしまうことに苦言を呈する。また韓国も、歴史の堅実な究明というより責任追及のメカニズムをつくることに注力してしまったという現状がある。(全3話中第3話)
時間:10分09秒
収録日:2019年8月22日
追加日:2020年2月16日
≪全文≫

●日中歴史共同研究における「南京事件」死者数問題


 日中関係や日韓関係にも関連して、少し歴史を世界史的に考えてきましたが、日中歴史共同研究に参加した者として申しますと、南京事件というものが大変大きな問題であったことは事実です。

 私たち日本側委員は南京事件の犠牲者、死者数について、どう考えてみても一番上限で20万人にはいかない。そうしたことを資料に基づいて語り、そして学説的にいうと4万人説、あるいは2万人説というものもあると虚心に紹介しました。

 ところが、中国側委員の発想は全然違うのであって、彼らは史料的根拠が定かではない数字として、被害者の総数を30万人以上だと主張して譲りませんでした。ある委員などは40万人というような数字を挙げた人もいたように記憶しています。


●歴史を政治外交の武器にしようとする手法が繰り返されてきた


 特定の事件だけが歴史の記憶に残り、そして記憶され続けるのは、歴史認識というランプの当て方で、いってしまえば被写体の見える部分に濃淡が出てくるからです。国民統合や世論を意識した外交は、現在の韓国において特に顕著なように、政権が変わる度に、歴史というあるライト、スポットが当たっていた箇所が変わっていく。そして、そのライトが当たっていた箇所をますます強くするか、あるいは弱めていくということが起きてくるわけです。

 一番困るのは、当たっていなかった箇所に関してことさらに新しい問題として、「事件だ、事件だ」と言って大きく問題視し、常に歴史というものを政治外交の武器にしようとする、そういう手法がこれまで繰り返されてきたことです。こういう繰り返しについて、私たちはどう対応していくのかという問題が21世紀の今において問われているという、ただそれだけのことなのです。

 そのことに関して過剰に、日本の国内の政治状況の変化だとか、あるいは日本の政党支持者、国民の意識の大きな変化とか、こういうことに全てを結びつけていくのは、必ずしもそれに当たらないのです。


●歴史の堅実な究明より責任追及のメカニズムを優先した文在寅大統領


 どちらかというと、現在の韓国・文在寅大統領の認識は、それでも過去には共同研究といったようなものが行われましたし、そういう試みもありましたが、そういう堅実な歴史の究明よりも、いわゆる加害者の責任といわゆる被害者による追及の関係を...

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