昭和天皇実録~公開の歴史的意義
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
第2次世界大戦での天皇の位置について知ることができる
昭和天皇実録~公開の歴史的意義
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
一般公開された『昭和天皇実録』とはいかなる書物なのか?10世紀以降に一時途絶えることもありながら、天皇の最初の祖とされる神武天皇から脈々と受け継がれてきたこの国史は、昭和天皇の生涯だけでなく、激動の時代「昭和史」を知る貴重な書となろう、と歴史学者・山内昌之氏は期待を膨らませている。
時間:13分36秒
収録日:2014年9月3日
追加日:2014年9月13日
≪全文≫

●激動の時代における昭和天皇の事績『昭和天皇実録』


 皆さん、今日は『昭和天皇実録』についてお話したいと思います。

 平成26年8月21日午後、宮内庁、そして宮内庁書陵部により、天皇皇后両陛下に対して『昭和天皇実録』を奉呈したことが発表されました。この書物の内容については、9月の中旬をめどに広く公開されることになっています。

 『昭和天皇実録』は、さまざまな公式の資料、あるいは個人の回顧録やメモなどに基づいて、昭和天皇のご一代の事績を中心に、日本の歴史を年代記としてまとめた書物であると聞いています。

 この書物は、確かに昭和天皇を中心にして書かれていますが、皇室全般だけではなくて、昭和天皇の在世された昭和の御代につきまして、激動の時代、すなわち、第2次世界大戦の前と後、こうした時代の政治や社会、外交につきましても、昭和天皇との関わりを中心に記述したものであります。


●『六国史』から『明治天皇紀』まで~国史として貴重な天皇紀


 この書物は、史料的な性格を併せ持つ編修ものでありますが、記述の形式としては時系列に沿った記述、すなわち編年体を採用しています。編年体による書物は、日本の歴史においては、古代の律令国家時代におきまして採られた歴史叙述の方法を採用したものでありまして、『六国史』と呼ばれる六つの国史が、編年体で書かれております。

 『六国史』は、古代8世紀、養老年間の『日本書紀』『続日本紀』をはじめとして、『日本文徳天皇実録』、そして、10世紀の延喜の年間の『日本三大実録』で終わる六つの国史であり、神の時代、すなわち、天皇の最初の祖とされる神武天皇から清和、陽成、光孝天皇に至るまでの天皇の歴史について、国史として編集したものでありました。しかしながら、こうした書物は、天皇の事績を時の天皇に対して捧げるという意味があったものでありまして、同時代においては、全ての人の目に触れたわけではありません。

 『日本書紀』から『日本三大実録』に至るこれらの書物は、現代の日本史研究においても重要な史料となっていますが、そうした流れをくんで、今回『昭和天皇実録』が編纂されたのです。

 10世紀に『日本三大実録』が編纂された後、天皇の権威と朝廷の権力が衰退したこともあって、天皇を中心とした実録の編纂と記述は、およそ1000年間絶えることになりました。その後...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫