●クラスター対策のほかに新たなプランを用意すべし
―― あと、論点の一つとして小宮山先生が提起されたのは、専門家の専門性が大事であるけれども、全体的な判断も大事であるということで、このバランスをどう取っていくか、という問題です。
この点で考えると、日本の場合、公衆衛生の先生方がクラスター対策ということでいいモデルを打ち出して進めていました。もちろん公衆衛生の先生方もこれがいつかは限界が来ることは分かっていたので、時間を稼ぐためにやっていたという面はあるということは、橋本英樹先生をはじめ、講師の先生方に教えていただいたことです。このあたりのことについて、曽根先生はどのように分析されていますでしょうか。
曽根 北海道大学の西浦博教授が行っているクラスター分析は、WHO(今回、WHOはかなりだらしなかったが)に提供できている日本のモデルの一つです。特に北海道では丹念にクラスターを見て、どこに感染が拡がっていったか、その感染経路を潰していくと同時に、それによって割合的には10人のうち1~2人が何人にも感染させるというクラスターをつくっていたことをつかみました。
ただし、クラスター分析は、感染者が少ない場合にはそのもとを断つべく、かなり職人芸的に丹念に拾い上げていくことが有効なのですが、感染経路が分からず、感染者が爆発的に増えてくるときには追いきれなくなってしまいます。そうなるとこれは、仮にクラスター対策がプランAだとすれば、プランB、あるいはプランCでもいいのですが、それを用意しておくべき問題だと思います。
●感染者数が少なくなってからのクラスター分析
小宮山 これはプランCかもしれませんが、私は「ポスト緊急事態宣言」について考えています。その時期には新規感染者が減ってきます。そこで、新規感染者の動きを追うのはやはりクラスター分析になるのではないかと思います。ただし、西浦先生は超人的に奮闘されていますが、その対策を続けていくためには、西浦先生のような人をたくさん出していくべきです。保健所や病院などの現場の人たちは、献身的に多くのことを経験しているので、技術も高まっているはずです。
ですから私は、日本ならある程度感染拡大が収まってきたときのクラスター分析はできるのではないかと思っています。そのあたりはどう考えていますか。
曽根 感染者数が少なくなってからクラスター分析があらためてできるのは、まさにご指摘の通りです。また、現場では、ラインやヤフーの位置情報などのデータを使用することによって、動向をつかんでいます。すると、どこに問題があるかというと、現時点(4月22日時点)では、例えば夜間の港区や新宿区で(人数的には世田谷区が多いのですが)、特に深夜の港区になぜこれほど人がいるのかと思うほど、非常に危険であるということが分かっています。これは、接客を伴う飲食業、あるいは深夜営業を行っている店が要因かもしれません。こうしたことは、もう少しデータが取れれば、「三密」を避けるだけではなく、ピンポイントの地域や店に対して、自粛ではなくもう少し禁止に近いメッセージが出せるのではないかと思います。ただ、そのあたりの情報は、行政側はかなり持っているでしょう。
●一律に外出自粛ではなく、日本的なプランCを考えたほうがいい
小宮山 今回のことで、不思議でしょうがないと感じていることがあります。日本では法規制による罰則はできませんので、これから罰則が可能な法律を作るべきだという人もいますが、日本のほとんどの国民は「三密」などの要請に、他の国では信じられないくらい従っています。そういった意味では、私はもっと早く終息してもいいと思っていたのですが、港区や新宿区などの例を聞くと、一部の人が感染を拡げているのかもしれないということです。だから、その場合は、一律にみんなを閉じ込めるというやり方ではなく、日本的なプランCを考えたほうがいいかもしれません。
曽根 クラスター班のノード分析はやれているのだろうと思います。ただし、現時点では携帯電話の位置情報のみなので、それ以上のところをもう少し理解した上で進めるということだと思います。
基本的に一番重要なのは、接触を禁止することなのです。つまり、ウイルスを絶つというのは人を制御することでしかやっていないのですが、外出というのは二次的なことで、要するに人と接触しなければいいわけです。
では接触しないようにするにはどうしたらいいのか。この問題に関しては、「三密」以上に意外と知られていないのではないでしょうか。例えば、会話や会議ではウイルスをばらまく、しかも30分とか1時間ほど一緒にいるとそうなる可能性があるので、それはやめたほうがいいとか、また、食事のときには対面はやめたほうがよく、人がいない別のところを向...