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ウイルス禍から抜け出すために必要な「3つの条件」とは

脱コロナを「知の構造化」で考える(6)日本が取るべき道

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
国際比較データを踏まえて、日本が進めていくべきことは何なのか。社会活動を再開する上で必要となるのは、検査による実態の把握、新規感染者の減少、安定的な医療体制の構築という3つの条件である。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:02
収録日:2020/04/22
追加日:2020/04/29
キーワード:
≪全文≫

●なるべく多く検査を実施して実態を明らかにする


―― 先ほどご提示頂いた資料を見ていても、近隣の国同士でもこれだけ状況が違うなかで、どのような対処が効いており、何が悪かったのかということを分析しなければいけないことがわかります。また、どのような手を打って、どのような手を打たなかったのかということも見なければなりません。それと引き比べて、日本の場合はどこまでできていて、どこが危ないのかを評価する必要もあります。

 もちろん、人の生死に関わることなので、なるべくリスクベースで分析していくことが重要です。しかし、恐がりすぎてもいけません。やはり、“正しく恐がる”ということの難しさを考えなければならないのですね。

小宮山 おっしゃる通りです。

―― そうなると、こうした前提を示した上で、今後は何が必要になっていくのでしょうか。小宮山先生としては、各国と比べて、日本がこれからなすべきことはなんであるとお考えでしょうか。

小宮山 連休明けまで、緊急事態宣言が有効となっています。「そこからどうやって抜け出すのか」が重要です。そのために何をやるべきでしょうか。

 まずは、先ほどお見せした図でも分かるように、新規で発生する感染をある程度減らす必要があります。減っていかないかぎり、緊急事態宣言は続くことになります。もちろん、ある程度は減っていくでしょうが、どの程度減れば良いと見なすかについては、議論があるでしょう。

 さらに、シリーズの途中で言った通り、日本は検査をあまりしていません。私はこれについて、日本の検査能力が十分生かされていないと思います。PCRにしても、ずいぶんたくさんキットがありますし、ドライブスルー方式のような他国で行われた手法を日本でできないわけがありません。ですから、本当は検査をもっとできる。これをまず実施して、実態を明らかにすることが不可欠でしょう。


●抗体検査の重要性


小宮山 また、欧米で最近、急激に行われているものとして、免疫を持っている人を調べる「抗体検査」が重要です。感染すると免疫ができるので、この獲得免疫を持っている人がどれほどいるのかを知るのは不可欠です。PCR検査で日本の100倍調べている国でも、もっと感染者はいるのではないかと疑いが持たれています。武漢で致死率2パーセントと言われていましたが、0.数パーセントの国も出てきています。死亡者を正確に抑えているとすれば、感染者がどんどん増えていった場合、致死率はどんどん下がっていきます。

 私が知っているかぎりでは、大規模な検査を最初に行ったのはオランダだと思われます。どうしようもないほど感染者が増えたため、「本当はどのくらい感染しているか」と大規模な抗体検査を行いました。その結果、今PCR検査で感染していると思われていた数の80倍の人が抗体を持っているということで、オランダの国民の3パーセントがすでに免疫を獲得していることが分かりました。

 その他にもアメリカなどでも抗体検査は始まっており、カリフォルニアではPCR検査で明らかになった感染者数の30~80倍が抗体を持っていることが分かりました。つまり、相当数検査している国でも、数十倍の数の人が知らずに感染しているのです。それでも症状を起こさずに、免疫を獲得しています。

 さまざまな点で破綻を迎えているイギリスでも、必死で、今後どうやって経済を再開するかの基準を決めようとしています。その1つが、実態を明らかにすることです。免疫を獲得している人には免疫証明書のようなものを出して、「この人は外出しても良い」という体制を取るのが良いのではないかという議論もされています。

 少なくとも、2つの条件がないと緊急事態宣言は解除できないでしょう。第1に実態を明らかにし、第2に新規の感染者を一定数まで減らすということです。最低でもこの2つが必要でしょう。


●医療体制の安定性も重要である


―― 今の問題を整理すると、もちろん感染者数や免疫の数も大事なのですが、同時に医療体制の崩壊を招かないようなセーブも必要ななかで、どうやって状態を戻していくかも考えなければならないということですね。こうしたものをトータルで考えていかなければ、政策判断ができないということですね。

小宮山 おっしゃる通りです。3つ目の医療現場の安定性も重要です。先ほどは検査の体制について言いましたが、私は、日本が医療現場を破綻しないように充分対処できると考えています。


●日本のベッド数は世界と比較しても多い


小宮山 三菱総研では今、先ほど私が紹介した分析を、さらに先に進めています。モデルを作り、どの対策がどのような効果を持ったのかを分析し、発信しようとしています。

 ホームページでは随時更新しているのですが、最初のも...
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