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海外情報の収集と科学技術と日本の底力で脱コロナに挑む

脱コロナを「知の構造化」で考える(7)情報力と科学力

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
今回のコロナ問題は「科学×グローバリゼーション」の話だと言う小宮山宏氏。新型コロナウイルスについて正しく理解するためにも、日本ではなく世界の情報を集めることの重要性を説く。今や科学技術は非常に速いスピードで進歩している。期待される新薬やワクチンが開発される日もそう遠くはないだろう。(全8話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:49
収録日:2020/04/22
追加日:2020/04/29
≪全文≫

●日本語の情報だけでなく、英語の情報を入手することも重要


―― 今シリーズのテーマの一つでもある「正しく恐れる」という意味でも、実際の他国の姿と比べて日本はどういう状況なのかということを理解した上の対策が必要になるかと思います。そこで重要となるのは、日本人としてどうやって海外の情報を入手するかということだと思いますが、その点についてはどうでしょう。

小宮山 鋭い指摘です。最終的には、英語の情報を入手することが必要でしょう。日本語の情報だけではダメです。特にこの問題については、世界が必死に取り組んでいます。先ほどの抗体検査にしても、世界が必死で取り組んでいる。そのなかで、日本の人たちが英語の情報を入手していないのは問題です。私も、英語を読むのに日本語の5倍以上の時間がかかります。だから、1人の読める量は大したことはありません。そのため、専門の人が専門に近いところを読んで、それを早く構造化する。このプロセスを作る必要があります。

 たとえば具体的に良いのは、英語のgoogleです。英語のgoogle検索エンジンを見るのと、日本のgoogle検索エンジンを見るのとでは、情報がまるっきり違います。以前私は、日本語の検索エンジンで「リチウムイオン電池の価格」と入れた場合と、英語で「price of lithium ion battery」と入れた場合とで、出てくる価格が10倍も違うことに気づき、リチウムイオン電池は本当は安いことがわかったということを『現代のリベラルアーツとは何か』(NHK出版)という本に書きました。

 新型コロナウイルスの場合、それと同じことが、もっと早いペースで起きています。リチウムイオン電池の開発は1~2年といった単位のスピードで変わっていきます。新型コロナウイルスの場合、日々変わっています。しかし、それを反映できるのがITのすごいところで、Google検索エンジンに「covid-19」や「corona virus」と入れると、きちんと情報が出てきます。そのなかで、英語のWikipediaのページが、まとまっている情報としては一番速いと思います。これをみんなで読み合う必要があります。また、そこには重要な引用文献が毎日、山ほど記載されます。とてもじゃないですが、1人で追えるものはわずかです。しかし、学生などに協力してもらうなどしながら、これをフォローしなければなりません。

―― 通常時であれば、「Wikipediaも情報が正しいかどうか」という議論になりますが、非常時の場合には多くの人が知恵を出し合っているので、一般人が1つの指標として見る分には、英語版を見る・見ないでは情報のレベルがまったく違ってくるということですね。

小宮山 そうです。


●答えを出すのは科学技術、新規の薬やワクチンの開発に期待


小宮山 また、この問題の最後の答えは薬やワクチンです。当初、このワクチンの開発には3年ほどかかると聞いていました。しかし今では、おそらく最速で半年くらいで、世界のどこかでワクチンができるだろうといわれています。

 薬もそうです。既存薬をどう使えるかということについても、現時点では世界でおよそ400種類の候補があります。これは5日前くらいの情報なので、もしかすると今はもっと多くなっているかもしれません。効くかもしれない薬もたくさんあるのです。また、BCGについては、それを打っている国や地域の致死率が低いともいわれています。その詳細についてはまだよく分かりませんが、根拠はある程度あるという話も出ています。抗体薬については、日本のベンチャーで開発が非常に進んでいるところがあるという話です。

 100年以上前に、スペイン風邪が流行りました(1918~1919年)。つい最近では、10年前ほどに豚由来の新型インフルエンザが猛威を振るいました(2009年)。しかし、スペイン風邪の時と今では、科学技術はまるっきり違います。10年ほど前と比べても、開発スピードは圧倒的に速い。特に世界のベンチャーの凄まじさは、この10年間でものすごく変わりました。

 今回の新型コロナの問題は、「科学×グローバリゼーション」という話です。日本の場合、行政の中心にいる人たちには、科学に弱い人も多いと思います。世界でも同様なのですが、日本では特にそうです。しかし、答えを出すのは「科学技術」です。おそらく集団免疫ができるのに2~3年かかるといわれていますが、その間に薬ができるでしょう。私はそう確信しています。効果的な既存薬の利用と新規の薬やワクチンの開発です。

 そうしたワクチンを作っても無駄だという人もいます。エイズと同様に、ウイルスがすぐに変異してしまって効かなくなってしまうだろうという主張です。しかし、研究している人たちはそんなことをすでに知っています。そうした問題を克服しようとして、開発に取り組んでいるのです。ですから、私は半年から1年くらいの間に、思ったより...
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