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9カ国の比較から見えてくる「日本の現場」の頑張り

脱コロナを「知の構造化」で考える(3)日本の感染状況

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
世界のデータを比較することによって、ウイルスの押さえ込みに成功している国の傾向が見えてくる。そのなかで日本はどんな状況なのか。現時点では少ない検査数ながらも、世界と比較しても感染率、致死率ともに極めて低く、まだ恐れるような状況ではないことがうかがえる。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:06:58
収録日:2020/04/22
追加日:2020/04/29
キーワード:
≪全文≫

●どの国がウイルス禍を抑えているかが一目瞭然


小宮山 国ごとで、データに違った特徴があります。アイスランドや韓国だけではなく、いろいろな形で多くの国が終息に向かっています。どうやったら終息を迎えられるのかを、見てみる必要があるでしょう。

 そのなかでも、ドイツは非常にうまくやっているといわれています。しかし、一番左側の図をご覧ください。見ると、当初はイタリアと同じような形で新規感染者が発生していることがわかりますが、明らかにその数字は落ちてきており、ピークの時の3分の1以下です。ここから、ドイツではすでに終息に向かっていることを読み取ることができます。

 オランダはドイツと接している国で、減っているといえるか、まだ感染拡大が終わっていないといえるかは、微妙なところです。

 台湾は非常にうまくいっているといわれていますが、新規の感染者は非常に減ってきています。

―― ピークは30人程度ですね。

小宮山 そうです。台湾は決して小さな国ではなく、人口も2千数百万人ほどいますので、非常に数字が小さいことが分かります。それがはっきり分かるのが、感染率で見たグラフです。ドイツやオランダは、人口当たりの比率にすると、同じような数字になりますが、ドイツの場合は減ってきています。それに対して台湾は、そもそも数字はゼロに近く、ほとんど見えません。

 オランダとドイツの違いは、一番右側の死亡率です。ドイツは国民に対する死亡した人の比率がこの程度です。

―― 100万人当たり数人程度ですね。

小宮山 それくらいに抑えられています。それに対してオランダでは大変なことになっています。台湾のデータはもう見えません。それくらい少ない。

 こうして見るとドイツは破綻ぎみの国に囲まれながら、明らかによく頑張っているといえます。台湾はほとんど抑え切っているということが見える。

 このように抑えている国は、実はたくさんあります。それを見ていかなければならないでしょう。

 次の図は、シンガポールです。この国の状況は非常に興味深い。感染者の数を見るとどんどん増えています。感染率にしても決して小さくなく、どんどん増えています。ところが死んでいる人はほとんどいません。このような抑え方もあるということです。

 実をいうと、オーストラリアやニュージーランド、チリなどでも、非常によく抑えています。オーストラリアでは感染率も非常に低く、死亡率も非常に低く抑えています。


●世界のデータを比較すれば、日本はまだ恐れる状況にはない


小宮山 それでは日本はどうでしょうか。実は、死亡している数はおそらくデータとしてほとんど間違っていないと思います。検査(PCR検査)の割合が先に挙げた国などに比べて100~10分の1程度でしょう。そのため、実際の感染者数は本当はまだ分かりません。とはいえ、少なくとも増えてきていることは確かでしょう。しかし、4月20~21日のデータを見ると、私はもう減り始めたと判断できると思います。一時期、1日に700人ほど感染者は増えていましたが、400人程度に減ってきています。これは日本全体の緊急事態宣言など、さまざまな措置の結果だと思います。この後、おそらく減っていくでしょう。しかし測定数があまりにも少ないので、その意味では心配です。

 どれくらいの感染率なのかというデータを見ると、やはり非常に小さいということが分かります。実際の感染者がこれよりも多いとしても、やはり感染率は低いでしょう。さらにはっきりしているのは、死亡率です。おそらくどの国も、感染率をどれくらい測れているかという点については、日本の100倍測定していても、確実とはいえないでしょう。それに対して死亡した人については、お医者さんのところで新型コロナによる肺炎が死亡の原因かどうかについて調べますので、かなり詳しいことが分かると思われます。そのため、新型コロナで死んだ人の数は、日本でもかなり正確だと思います。そうだとすれば、日本における死亡率は極めて低いのです。

 私は、日本が政策的に全て正しいことを行っているとは思っていません。しかし、こうしたデータを見ると、日本は現場が非常に強い。過去に工業化で成功してきた時などと同じ構造で、保健所の保健師さん、お医者さんや医療従事者をはじめ、ほとんどの国民が非常に良くやっていることが分かります。また、日本には日常的にハグしたり頬を合わせたりするというような習慣はなく、日本人が基本的に清潔好きというような要因もあるのでしょう。結果的には、国際的に比較すれば、日本はまだ、そんなに恐れる状況にあるわけではないということです。

 以上が9つの国を比べた際に分かったことです。
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