脱コロナを「知の構造化」で考える
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専門家が見誤ってしまう部分を、いかに支えていくか
脱コロナを「知の構造化」で考える(5)広範な専門家の力
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
ウイルスはすでに変異しており、それが致死率を高くしているという議論があるが、ヨーロッパ各国の差異を見ると、高い致死率は変異の影響ではないことが分かる。重要なのは問題の全体像をデータから正しく把握することである。そのためにはウイルスの専門家だけでなく、問題の全体像を押さえている人が必要となる。(全8話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分55秒
収録日:2020年4月22日
追加日:2020年4月29日
≪全文≫

●現時点で、ウイルスの変異と致死率に直接的な関係はあるか?


―― ここまで、具体的な数字を示していただきました。やはり、怖いことはもちろんですが、全世界でどのような状況になっているのか、病気の全体像がどうなのかをきちんと把握した上で、対策する必要があるということですね。

小宮山 そうですね。

―― もう1つ重要なのは、堀江重郎先生(順天堂大学医学部大学院医学研究科教授)が3月の講義で指摘された、ウイルスの変異についてです。当初、中国の武漢で起きていたウイルスは、長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学長)の講義でも示された通り、どんどん変異していっています。イタリアなどヨーロッパで猛威を振るったものは、武漢のものとは少し型が変わっているのではないかという議論です。この点については、先生はどのように見ていらっしゃいますか。

小宮山 このコロナが変異しやすいという点については、医者やウイルス学者のいう通りだと思いますし、すでにA、B、Cと変異したものが3つあるという話もあります。しかしそれが、イタリアの致死率13パーセントという数字に影響をもたらしているとは、私は考えていません。

 各国間で比較すると分かるのですが、イタリアを囲んでいる国は、フランス、スイス、オーストリア、スロベニア、そしてその北にはドイツです。例えばオーストリアやスロベニアの致死率は、ドイツと同じくらいで2パーセント程度です。ということは、イタリアの13パーセントという致死率は、変異株の致死性が高いからではないということです。もしそうであれば、オーストリアやスロベニアなど、イタリアに接している国も、同等の致死率になるでしょう。実際、これらの国の感染率はほとんど同じなので、おそらく同じ株に感染しているのだと思います。しかし、致死率が全然違います。イタリアで極端に高く、その他の2国ではそれほど高くありません。

 先ほど、ベネルクス3国のお話をしました。ベルギー、ルクセンブルク、オランダです。オランダとベルギーの致死率は凄まじいものがあります。しかし、ルクセンブルクは、ずっと低い致死率を維持しています。このことは、コロナの株が変異しているというようなことではなくて、むしろ習慣や国のガバナンス、あるいは医療崩壊なのかどうかなど医療体制といった社会的影響によって生じて...

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