新型コロナ問題の全体像~グローバリゼーションと国家主権~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
緊急事態への対応で優れるのは民主主義か独裁か?
新型コロナ問題の全体像~グローバリゼーションと国家主権~
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
新型コロナウイルスの問題は、これまでの社会、国際秩序を大きく変えようとしている。特に着目すべきは、各国がこの問題への対処を個別に行っているため、グローバル化に対して主権国家へ回帰しているのではないかという点である。そして、緊急事態には民主主義体制よりも独裁、権威主義体制のほうが対応しやすいのかという議論もある。その意味でも重要な問いかけとなるのは、民主主義はこの危機を乗り越えることができるのかということだ。
時間:9分03秒
収録日:2020年4月28日
追加日:2020年5月3日
≪全文≫

●新型コロナウイルス問題をグローバリゼーションとの関係で考える


 本日は、新型コロナウイルスについてお話しします。すでにテンミニッツTVの中でも、何回かこのウイルスについて、全体像からアプローチするという試みをしてきました。

 リベラルアーツ&サイエンシーズとしてわれわれが第1に努力しているのは、文明論です。これは文化や芸術についてのアプローチです。第2に努力しているのは、科学技術について考えることです。第3に歴史や社会です。これは、ここで取り上げるグローバリゼーションや国家、社会などが関係します。さらに第4は価値や倫理の問題で、これらを哲学的に考えることも重要な課題です。これらを、今までの科学的知見を総動員して考えてみます。

 今日お話しするのは、これらの中でもかなり限定した内容です。特にグローバリゼーションや政治、あるいは社会のシステムに焦点を絞ってお話しします。

 新型コロナウイルス問題を文明論的に考えることは、すでに多くの論者によって実践されています。例えば、BC(Before Corona)やAC(After Corona)という言葉が頻繁に使われるほど、新型コロナウイルスが社会に与えた影響は大きいかもしれません。特に日本の歴史に考えると、明治維新や大東亜戦争、第二次世界大戦などが1つの区切りとなってきました。世界の中でも、今回の新型コロナ問題は大恐慌(1930年代の世界恐慌)以来であるといわれています。歴史的に考えれば、ペストやコレラ、スペイン風邪などもありますが、これらも人々の心や社会に影響を与えてきました。特に不条理や理不尽なことが、宗教や哲学、人の生き方に変化を与えたという面もあります。

 その中で今日お話ししたいのは、グローバリゼーションとの関係です。われわれは、ヒト・金・モノに加えて、情報とウイルスが世界中で飛び回っていると捉えています。今回はその中で、ウイルスを止めたい。そのためにヒトの動きを止めるということですが、その意味でいうと、モノの動きはかなり滞っています。しかし、金、あるいは情報はまだ、グローバルな世界で動いています。


●今回の問題で主権国家へ回帰しているのではないか


 こうしたときに、なぜわれわれは、古典的で主権国家的な対応をせざるを得ないのでしょうか。

 今回の問題により、グローバル化に対して主権国家へ回帰しているようにも思えます。各国の対...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏