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2020年の全米暴動は「米国建国の原罪」に起因する

2020年全米暴動を考える(1)複雑な人種差別問題

東秀敏
米国安全保障企画研究員
概要・テキスト
2020年5月に起こった黒人男性に対する白人警官の暴行に端を発する暴動は、アメリカ全土を混乱の渦に巻き込んでいる。その背景には、アメリカの複雑な人種問題や、選挙への政治利用を目論む集団の存在がある。中でも人種問題は、人間平等を掲げて建国されたはずのアメリカが抱える原罪である。(全2話中第1話)
時間:13:26
収録日:2020/06/11
追加日:2020/06/27
カテゴリー:
≪全文≫

●今回の暴動に関する3つの問題提起


 本日は、2020年6月現在、今まさに起こっている全米暴動についてお話しします。私は東秀敏と申します。米国安全保障企画で研究員を務めています。私の経歴を簡単に説明すると、米国の主にワシントンでシンクタンクに勤務、およびロビイング活動に数年従事しておりました。その経験をもとに現在、日本で起業して活動しています。

 今回の話は、以前に暮らしたことのあるワシントンやテキサスをはじめ全米各地で見聞きしたことを基礎にした私の分析を取り入れたものになります。

 さて、今回の暴動に関して、3つの問題提起をしたいと思います。1点目は、ミネアポリス警察による黒人男性に対する暴行が発端となって今回の暴動は起こったのですが、これが何を意味するのかという点です。2点目は、米国の崇高な建国の理念と人種問題、特に黒人差別の間の関係はどのようなものかという点です。3点目は、現在2020年大統領選に向けたキャンペーンが行われていますが、これに対してどのような影響があるのかという点です。この3点に関して、今回の分析を進めていきたいと思います。

 要旨としては、2020年6月現在起こっている全米暴動は、米国建国以来、現在にまで尾を引く人種問題に起因しており、現行の大統領選挙に直接影響を与えるものです。ここで重要なのは、米国は人間平等という思想に基づき建国されているのですが、建国の際に人種差別を前提としていました。この矛盾は、「米国建国の原罪」とも呼べるもので、この点をしっかりと押さえなければ、今回の暴動を理解することは難しいでしょう。

 人種問題は、黒人対白人という単純な構造ではなく、歴史的に見ると非常に複雑な問題です。さらに、この問題に政治が絡んでくるというややこしい構造になっています。特に冷戦後の人種問題には、イタリアのマルクス主義者であるアントニオ・グラムシの理論をもととする、文化マルクス主義が綿密に関連しています。ドナルド・トランプ大統領は、これに反対する勢力です。ですので、軍隊を動員する、一連の暴動の背景にいるANTIFAという組織をテロリズムと見なすと発言して圧力をかけるなどの、今回の非常に強圧的な対応の背景には、この文化マルクス主義に基づくリベラルの勢力を骨抜きにして、...
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