2020年全米暴動を考える
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2020年の全米暴動は「米国建国の原罪」に起因する
2020年全米暴動を考える(1)複雑な人種差別問題
政治と経済
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー)
2020年5月に起こった黒人男性に対する白人警官の暴行に端を発する暴動は、アメリカ全土を混乱の渦に巻き込んでいる。その背景には、アメリカの複雑な人種問題や、選挙への政治利用を目論む集団の存在がある。中でも人種問題は、人間平等を掲げて建国されたはずのアメリカが抱える原罪である。(全2話中第1話)
時間:13分26秒
収録日:2020年6月11日
追加日:2020年6月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●今回の暴動に関する3つの問題提起


 本日は、2020年6月現在、今まさに起こっている全米暴動についてお話しします。私は東秀敏と申します。米国安全保障企画で研究員を務めています。私の経歴を簡単に説明すると、米国の主にワシントンでシンクタンクに勤務、およびロビイング活動に数年従事しておりました。その経験をもとに現在、日本で起業して活動しています。

 今回の話は、以前に暮らしたことのあるワシントンやテキサスをはじめ全米各地で見聞きしたことを基礎にした私の分析を取り入れたものになります。

 さて、今回の暴動に関して、3つの問題提起をしたいと思います。1点目は、ミネアポリス警察による黒人男性に対する暴行が発端となって今回の暴動は起こったのですが、これが何を意味するのかという点です。2点目は、米国の崇高な建国の理念と人種問題、特に黒人差別の間の関係はどのようなものかという点です。3点目は、現在2020年大統領選に向けたキャンペーンが行われていますが、これに対してどのような影響があるのかという点です。この3点に関して、今回の分析を進めていきたいと思います。

 要旨としては、2020年6月現在起こっている全米暴動は、米国建国以来、現在にまで尾を引く人種問題に起因しており、現行の大統領選挙に直接影響を与えるものです。ここで重要なのは、米国は人間平等という思想に基づき建国されているのですが、建国の際に人種差別を前提としていました。この矛盾は、「米国建国の原罪」とも呼べるもので、この点をしっかりと押さえなければ、今回の暴動を理解することは難しいでしょう。

 人種問題は、黒人対白人という単純な構造ではなく、歴史的に見ると非常に複雑な問題です。さらに、この問題に政治が絡んでくるというややこしい構造になっています。特に冷戦後の人種問題には、イタリアのマルクス主義者であるアントニオ・グラムシの理論をもととする、文化マルクス主義が綿密に関連しています。ドナルド・トランプ大統領は、これに反対する勢力です。ですので、軍隊を動員する、一連の暴動の背景にいるANTIFAという組織をテロリズムと見なすと発言して圧力をかけるなどの、今回の非常に強圧的な対応の背景には、この文化マルクス主義に基づくリベラルの勢力を骨抜きにして、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉