●文化マルクス主義、草の根運動、そして新自由主義の奇妙な結合
次に、文化マルクス主義と民主党の関係について取り上げます。文化マルクス主義とは、文化ヘゲモニー論を唱えたイタリアのマルクス主義者グラムシの思想に基礎を置いています。これは、支配者側の価値観が文化的な基準と見なされるという主張です。裏を返せば、メインストリームの文化を破壊すれば社会は崩壊するということです。こうした主張が、冷戦期の新左翼に影響を及ぼしました。
また、1960年代には草の根運動が理論化されました。ソウル・アリンスキーというロシア系ユダヤ人の理論家が、この運動に大きな影響を与えました。ヒラリー・クリントン氏は、大学の卒業論文でアリンスキーの草の根運動論を扱っています。バラク・オバマ氏もアリンスキーの理論に影響を受け、草の根運動に積極的に関わっていました。
冷戦後の世代の民主党、特にクリントン氏やオバマ氏に代表される勢力は、文化マルクス主義とアリンスキーの草の根運動論に、強い影響を受けています。ここに矛盾が生じます。すなわち、彼らも貧民層を煽って草の根運動を展開するだけでは限界があることが分かっていました。特に大統領選で勝利するためには、資金が必要です。そのため、新自由主義(ネオリベラル)勢力と協力して、グローバル経済のために奔走するというスタンスを取りました。
その結果、文化マルクス主義、草の根運動、ネオリベラリズムの奇妙な組み合わせが生まれました。ANTIFAは、民主党の親衛隊のような役割を果たしています。実際に、毛沢東時代の中国の紅衛兵(Red Guard)をモデルに組織されています。民主党が通常の手段で解決できない問題が発生すると、ANTIFAを動員して矛盾を解決しようと努めるのです。
●今回の暴動はトランプにとってはむしろ大統領再選への好機
最後に、今回の暴動とトランプ大統領の関係についてご説明します。トランプ大統領は、マスコミで報道されるように、人種差別主義者だと思われがちですが、実はそうでもありません。彼の目標はいろいろとあるのですが、その大きな一つが行き過ぎた文化マルクス主義との決別です。特にオバマ大統領時代に、民主党が過激な文化マルクス主義を追求しました。例えば、LGBTの問題があります。数年前まではLGBTでしたが、今ではLGBTQと呼ばれており、次々とアルファベットが増えています。このように、文化マルクス主義を突き詰めていくと、それに伴って社会が分断されていきます。
一般には受け入れられていませんが、トランプ大統領は分断を求めてはいません。彼はアメリカの独特の価値観に基づいて、統一を目指しているのです。分断を煽っているのは、むしろ民主党側なのです。さらに、先ほども指摘した通り、白人が少数派(被差別側)に成り下がっているので、彼らは救済を求めてトランプ大統領を支持するのです。
こうした文脈の中で、今回の暴動はトランプ大統領にとってどのような意義があるのでしょうか。これは逆説的な結論になるのですが、この暴動を、民主党の自滅を加速させ、コアな白人層に加えて、民主党の中道派や国防組織、特に軍人を味方につける最大のチャンスだと、彼は見なしています。
ANTIFAを国内テロ組織に認定することで、民主党を骨抜きにすることができます。民主党の暴力装置を取り除くということなので、これを失うと民主党はかなり力が弱くなります。現在、破壊活動や警察廃止論など訳の分からないような極論が飛び交っているので、常識を渇望する人が増えてきています。ウォレン・ハーディングの場合にも、常識を求める人々の声が彼への支持に流れたという事情がありました。1920年の大統領選と同じ構図になってきているのです。
マスコミの報道だけを見ると、トランプ大統領は包囲網を敷かれて危険な状況にあると思われていますが、逆に常識を重んじる人はトランプ大統領支持に傾いています。
ここで重要なのが、トランプ大統領の知的参謀とも呼ぶことができる、スティーブ・バノン氏の存在です。彼は、かなり前から人種問題を起因とした内戦の勃発を視野に入れていました。したがって、今回の暴動は、トランプ大統領側からすれば、シナリオ通りともいえる展開なのです。客観的に分析すると、民主党は自滅の方向に進んでいるといわざるを得ません。トランプ大統領の基盤は、マスコミの報道だけ見ると分かりづらいのですが、かなり盤石なものとなっています。
●日本にとって大きな意味を持つのは、人種問題より米国が内戦状態にあること
今回の結論に入ります。今回の暴動は、南北戦争以来初めての内戦といっても良い規模...