●完璧なシステムを考えるよりも積極的に新たな取り組みへ
―― (前回のお話を受けて)ある意味ではそういった社会的な組み立てをどのように練っていくかが重要ですね。
小宮山 そうですね。完璧なシステムを考える時間はありません。それが、最初に指摘した「アジャイル」という概念の話につながってきます。状況が刻々と変化しているので、今までの日本で行われてきたように、国家としての体制を議論して形成して、それからどうしましょうかという議論ではないのです。
そうしたときに、例えばPCR検査に関しても、これまでの少なくとも10倍、できれば100倍程度に増やしていく必要があります。また、新しい検査方法が次々と出てきているので、国の認可過程などに関係なく、正しいと思えばどんどんと進めていく。今いいと思うことをどんどんと進めていく。それが、反省しながら前進するための必要条件だと思います。
●専門家の意見を政治的意思決定にどのように反映していくべきか
―― はい。今非常に重要なご指摘があったと思います。政治家など、特に医療が専門でない人々が、この問題について考えて動かなければならない状況です。こうしたアンノウン(未知)の問題に対していかにアジャイルに対応するかという中で一つ大きな問題になるのは、さまざまな専門家が異なる主張をする中で、政治家はそれをどのように受け止めて、どう判断していけば良いのかということです。
これは医学に限らず、経済問題など、さまざまな分野で当てはまります。曽根先生、政治家としては、専門家の意見の取捨選択にどのように判断していけば良いのでしょうか。
曽根 はい。前提条件として、今回の新型コロナには、未知という問題と、そのことに対する恐れという問題があり、つまり「分からないから怖い」という心理が国民の根底にあります。ですので、最後にはその国民の心理を乗り越えなければならないのですが、政治家はどうしてもそれを前提として議論せざるを得ません。
もう一つ、専門家と政治家、あるいは専門的な知識と政策決定の関係は、昔からの大きな課題です。つまり、専門家が意思決定に加わった方が良いとする一つの立場と、逆に政治家が専門的な知識や基本的なデータを読み込む能力を持つ必要があるとする、もう一つの立場があります。現実はその折衷なのでしょうが、大きく分けてその2つのどちらを取るかと...