中東におけるコロナ問題
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中東での感染拡大の背景にある3人の独裁者とは
中東におけるコロナ問題(2)独裁者と陰謀論
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
多宗教、多民族ゆえに国家としてのまとまりに欠ける中東諸国は、国としての形式を維持するために独裁者を冠しているケースが少なくない。山内昌之氏はこの独裁者を「世俗的独裁者」「神権的独裁者」「超俗的独裁者」に分類し、それぞれ誰のことか本編で述べているが、問題はそれぞれの独裁者が「コロナ禍は敵対する国による陰謀によるものだ」と主張していることだ。このような政治的混乱のもと、市民の宗教的、社会的生活はモスクの閉鎖、宗教的行事の中止やインバウンド消費の落ち込みなどにより、大きな変化を強いられている。(全3話中第2話)
時間:13分24秒
収録日:2020年9月1日
追加日:2020年11月10日
≪全文≫

●感染拡大の背景にある独裁者3タイプ


 皆さん、こんにちは。

 前回に引き続き、本日は中東の新型コロナウイルス拡大による大きな禍、コロナ禍の問題について、国家という問題を中心に考えてみたいと思います。

 現在の中東において国家としてまとまりを維持している国々においても、現実には一種の独裁者、その定義はいろいろ分かれますが、つまり特殊な独裁者の締めつけによって国民を統合していた政治の断面というものを、はしなくも如実にさらけ出した点に、今回の悲劇的な疾病、感染症の拡大の政治的な本質があります。

 しかも、深刻なのはこの各種の独裁者統治が必ずしも感染症危機の早期解決につながらなかった点にあります。3人の独裁者を取り上げてみましょう。

 トルコの選挙で合法化された「世俗的独裁者」と呼んでおきましょう。レジェップ・タイップ・エルドアン大統領のことです。この世俗的独裁者と比べて特徴的なのは、イラン・イスラム共和国憲法によって最高指導者として制度化された「神権的独裁者」と呼んでおきましょう。神権的独裁者であるアリー・ハーメニー氏を挙げることができます。そして、もう1人はワッハーブ派というスンニ派の一番厳格な教義を信じる、ワッハーブ派の宗教的権力とサウド家という世俗的権力。このワッハーブ派の宗教的権力とサウド家の世俗的権力をまとめあげた政教一致型と申しましょう。政教一致国家サウジアラビアの「超俗的独裁者」と定義しておきたいと思います。つまり、俗権あるいは世俗的な政治性というものを超越し、しかしそこに宗教的権力を溶かしこんでいる、そうした独裁者がムハンマド・ビン・サルマン皇太子です。

 この3人はそれぞれ独裁者としての性格が違いますが、コロナ禍によって統治基盤が実は比較的弱い、ぜい弱であるということを露呈したというのが、今回のコロナウイルスの感染危機による政治状況の特徴ではないかと思われます。


●生物学的戦争、経済テロリズムなど各種陰謀論が横行


 もう1つ彼らに共通しているのは、一種の陰謀史観、あるいは陰謀理論によって自分たちの政治責任を回避しようとする傾向が強いことです。ハーメニー氏の住んでいるのはテヘランではなくて、そこから西に行ったコムという町(ペルシャ風に発音するとゴム)が、このコム、あるいはゴムにおいてコロナが流行したことが知られています。

 これは...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾