中東におけるコロナ問題
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中東での感染拡大の背景にある3人の独裁者とは
中東におけるコロナ問題(2)独裁者と陰謀論
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
多宗教、多民族ゆえに国家としてのまとまりに欠ける中東諸国は、国としての形式を維持するために独裁者を冠しているケースが少なくない。山内昌之氏はこの独裁者を「世俗的独裁者」「神権的独裁者」「超俗的独裁者」に分類し、それぞれ誰のことか本編で述べているが、問題はそれぞれの独裁者が「コロナ禍は敵対する国による陰謀によるものだ」と主張していることだ。このような政治的混乱のもと、市民の宗教的、社会的生活はモスクの閉鎖、宗教的行事の中止やインバウンド消費の落ち込みなどにより、大きな変化を強いられている。(全3話中第2話)
時間:13分24秒
収録日:2020年9月1日
追加日:2020年11月10日
≪全文≫

●感染拡大の背景にある独裁者3タイプ


 皆さん、こんにちは。

 前回に引き続き、本日は中東の新型コロナウイルス拡大による大きな禍、コロナ禍の問題について、国家という問題を中心に考えてみたいと思います。

 現在の中東において国家としてまとまりを維持している国々においても、現実には一種の独裁者、その定義はいろいろ分かれますが、つまり特殊な独裁者の締めつけによって国民を統合していた政治の断面というものを、はしなくも如実にさらけ出した点に、今回の悲劇的な疾病、感染症の拡大の政治的な本質があります。

 しかも、深刻なのはこの各種の独裁者統治が必ずしも感染症危機の早期解決につながらなかった点にあります。3人の独裁者を取り上げてみましょう。

 トルコの選挙で合法化された「世俗的独裁者」と呼んでおきましょう。レジェップ・タイップ・エルドアン大統領のことです。この世俗的独裁者と比べて特徴的なのは、イラン・イスラム共和国憲法によって最高指導者として制度化された「神権的独裁者」と呼んでおきましょう。神権的独裁者であるアリー・ハーメニー氏を挙げることができます。そして、もう1人はワッハーブ派というスンニ派の一番厳格な教義を信じる、ワッハーブ派の宗教的権力とサウド家という世俗的権力。このワッハーブ派の宗教的権力とサウド家の世俗的権力をまとめあげた政教一致型と申しましょう。政教一致国家サウジアラビアの「超俗的独裁者」と定義しておきたいと思います。つまり、俗権あるいは世俗的な政治性というものを超越し、しかしそこに宗教的権力を溶かしこんでいる、そうした独裁者がムハンマド・ビン・サルマン皇太子です。

 この3人はそれぞれ独裁者としての性格が違いますが、コロナ禍によって統治基盤が実は比較的弱い、ぜい弱であるということを露呈したというのが、今回のコロナウイルスの感染危機による政治状況の特徴ではないかと思われます。


●生物学的戦争、経済テロリズムなど各種陰謀論が横行


 もう1つ彼らに共通しているのは、一種の陰謀史観、あるいは陰謀理論によって自分たちの政治責任を回避しようとする傾向が強いことです。ハーメニー氏の住んでいるのはテヘランではなくて、そこから西に行ったコムという町(ペルシャ風に発音するとゴム)が、このコム、あるいはゴムにおいてコロナが流行したことが知られています。

 これは...

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