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アベノミクス第二の矢による財政再建はどうなるのか?

アベノミクスの成果とリスク(2)第二の矢:積極財政と財政再建の難しさ

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
出典:首相官邸ホームページ
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/yawaraka_seichosenryaku.pdf)より加工して掲載
アベノミクス第二の矢・積極財政。20兆円の緊急経済対策を打ち出すなか、財政再建はどうなるのか。消費税導入後の経済成長の見通しと賃上げに関する政府の動きについて解説する。(島田塾第109回勉強会 島田晴雄氏講演『日本経済は果たして、どこまで成長出来るのか』より:全14話中2話)
時間:13:51
収録日:2014/01/14
追加日:2014/02/24
カテゴリー:
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●積極財政と緊急経済対策


 さて、続いて第二の矢を見たいと思います。第二の矢は財政ですね。積極財政ということで、みなさんご記憶のように昨年政権が発足してすぐに緊急経済対策20兆円と、補正予算13兆円。市場で2番目に大きいのですが、やりました。


●財政再建は後退?


 こういうことをすると何が起きるかというと、日本では財政再建計画が2010年に定められているのですが。これはプライマリーバランス、みなさんご存じだと思いますが、日本経済は予算が96兆円あり、収入も96兆円ある、支出も96兆円ある。ところが国民のために政府が使っているお金は50兆円くらいしかありません。税収も50兆円くらいしかないのです。では、後の40兆円は何かというと、借金をしているわけですよね。つまり国民から直接いただいた税金と、国民に直接払うお金の差額をプライマリーバランスといいます。今50:50と言いましたが、実はそうではなく、10何兆も離れています。2010年にこの目標を定めた時にはGDPの6.7パーセントもプライマリーバランスが離れていました。これを2015年には半減させ、2020年には0もくしは黒字にするというのが財政再建計画です。

 こういうことがはっきりできると世界中が理解したら、日本は国民から膨大な借金をしているけれども、それは結局返せるのだから大丈夫だ、ということになるのですね。これを財政規律といいます。財政規律が日本にあるのかないのかが問われている。もし「財政規律がないぞ、あの国は。借りたものが返せないぞ」ということになると、ギリシャのようになって、国債が紙くずになってしまいます。ということが今、非常に問われています。13兆円も出したものですから、この財政再建計画がうんと後ろに遠のいてしまうのですね。


●財政規律回復への疑念


 しかし疑念が出てきた。昨年の八月に中期財政計画というものを政府が発表して、強引に、財政再建路線を外れていません、ということを言いました。確かに直近の2年くらいは外れない可能性がでてきたのですが。2020年には消費税を10パーセントにしますけれども、それでも足りない。経済がうんと成長すれば別ですが、経済が今みたいなトロトロした成長だと足りない。専門家の間では消費税16パーセントにすればなんとか消費税で穴が埋められるのではないか、という説がでていますけど16パーセントというのは急には飲めないですよね。


●消費税


 もう一つ問題が起きているのが、消費税が今年の4月から上がる。上がる前に買っておこうとみんなが駆けこみ需要をやっている。経済成長が今年度は非常に高いです。政府の見通しで2.6パーセントという経済成長。ただ、駆け込み需要が終わって消費税が導入されると反動減でどんと落ちるというので、政府が1.4パーセントという見通しを出していますが、民間は「政府は何を甘いことを言っているんだ」と。民間はせいぜい0.8パーセントになるだろうと言っていて、そうなると2パーセント近く成長率が落ちる可能性があります。というようなことがあり、日本の経済の第二の矢は結構危ない状況です。


●2014年度予算と財政再建の可能性


 それで年末に、エコノミストを集めて政府が予算の説明をすると言うので、私も呼ばれて話を聞いていたのですが、そこでは中期の財政計画のように、2年間は計画路線に沿って財政再建を歩みますと言っています。それは何かというと、一番助かったのは経済が成長したので2兆くらい税の増収があったと、そこに今度の消費税の増収分を入れると6.9兆円になりますが、消費税は4.5兆円増収になります。それが続くので、何とかつじつまが合うといっているのですね。我々はちょっと質問しましたが、目先のつじつまは合うかもしれないが、この先はどうなりますかと。日本は高齢化が進むので、毎年1兆円以上も社会保障の費用が上がっていく。経済成長は思ったよりも上がらない。そして金利がだんだん上がっていくと、どういうことが起きるかというと、多分かなり難しいところに追い込まれていく姿が想定されますね。消費税16パーセントでは足りないとかですね。そうすると経済がデフォルトを起こす可能性もあるのです。


●「第二の矢」のリスク:財政問題⇒国債暴落の危険


 これは、小柴さんが11月に日本経済のデフォルトが起きるという可能性を声高におっしゃって、後で小柴さんの骨子を紹介しますが。実際に専門家はそう見ている人もいて、すでに資産を海外に動かしている人もたくさんいます。日本がはっきりいって潰れてしまう可能性も出てくるわけです。そういうことを考えて何か戦略を考えているのかと質問しましたら、彼らが言ったのは「14年度と15年度は大丈夫です」と、それしか言わないのです。ちょっと待ってくださいと。昔の財務省・大蔵省ならそうじゃない。政治家にちょっとそっちにいってくれとい...
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