「激動と激変の世界」の読み方2022
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メルケル氏退任後、求心力低下したEUと日本への影響
「激動と激変の世界」の読み方2022(4)EUとアジアの政治情勢
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
ヨーロッパ諸国に目を向けてみると、政治状況の変化により各国の関係も変わることが懸念されている。中でも、ドイツで長らく首相を務めたアンゲラ・メルケル氏の退任は、EUにとっても有能な調整役の喪失を意味し、組織体制に大きな影響を与えることが予想される。EUの現在地をアジアの政治情勢とともに俯瞰する。(全4話中第4話)
(2022年1月18日開催島田塾年頭講演「激動と激変の時代:日本の選択」より)
時間:8分12秒
収録日:2022年1月18日
追加日:2022年4月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●ドイツの政権交代がEUの外交に与える影響とは


 それを申し上げたあとで、世界がどうなっているかについて話します。

 まずヨーロッパの状況ですが、EUはもう本当に宗教のようで、なんと2021年から2027年までの中期予算を立てています。EUは団体であって国ではないので、大したお金を持っていないのですが、それでも約220兆円出すのです。そのうちの半分は地球環境とデジタル戦略です。これが成長戦略だとEUの人は本気で信じているのです。これはもうほとんど宗教です。

 そのためにEUも稼がなければいけないので、EU排出量取引や国境炭素税、法人新税など、7つも新しい税をつくってそれでやるのだといっています。そして、アメリカはそれについていこうとしています。日本もついていかないと追い出されてしまいます。

 EUは、Brexitでイギリスが出たので、他の国にもそれをやられたらかなわないということですが、今怪しいのがポーランドとハンガリーです。EUの規約に反しているので、EUはこれをどうやって懲らしめようか懸命に考えているのですが、大変です。

 アンゲラ・メルケル氏がドイツの首相だった時は、ロシアや中国と良い関係を持っていたのですが、今のEUの主要国、特に新しいドイツはそれを認めません。それから、アメリカとの間に隙間風が入ってきました。先ほどから申し上げていますが、アフガニスタンから撤退した時のことが、もうトラウマになっています。そして、AUKUSをつくってEUを太平洋から排除したので頭にきています。

 次にドイツの政権交代です。やはりメルケル氏はすごくて、16年間首相やっていました。メルケル氏は別に新しいアイデアはないのですが、調整の名手です。駆け回って、調整して、一番良いところを見つけてくれます。ロシアとも何とか都合をつけていました。メルケル氏は、16年の間に自動車産業グループを連れて、12回も中国に行っています。そのため、中国にとってドイツは友邦に近いのです。かといって、インド太平洋、ヨーロッパと一緒にやるために、フリゲート艦の派遣もやっています。国際関係をよく見ています。

 ドイツの新しい政権は、「信号連立」という...

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