第一次世界大戦から100年にあたって
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
スエズ運河とアラビア湾が挟む中東の地政学的意味が大変化
第一次世界大戦から100年にあたって(2)帝国崩壊の余波と中東の役割
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
第一次世界大戦から100年、中東から黒海に至る地域で国際秩序を揺るがす事件が絶え間なく続いている。これまで第一次世界大戦に関する考察は、ヨーロッパの中心性を自明の前提とし、中東の事象は脇に追いやられる傾向があった。この考察は、驚くほど洞察力に欠けると山内昌之氏は指摘する。果たして、その理由は?  第一次世界大戦を機にヨーロッパと中東が外交、国際秩序という観点からどう変化していったのか、山内氏が解説する。(全4話中第2話目)
時間:14分47秒
収録日:2014年11月5日
追加日:2014年12月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●中東から黒海に至る地域で国際秩序を揺るがす事件が絶え間ないのは帝国崩壊の余波


 さて、結局のところ、第一次世界大戦から100年が経っても、中東から黒海に至る地域で国際秩序を揺るがす事件が絶え間ないのは、歴史的に多民族国家として形成された帝国崩壊の余波がまだ消えていないからです。

 これに関係することは、以前にもお話したこともありますが、もう一度整理するとすれば、そのリストには、ホーエンツォレルン朝のドイツ帝国、ハプスブルク朝のオーストリア・ハンガリー帝国、ロマノフ朝のロシア帝国、そして、オスマン朝のトルコ帝国がありました。さらに、これらに加えて、大戦勃発の直前に解体した清朝の中華帝国を追加することもできます。


●大戦後、中東は地政学的な位置と天然資源の存在として重要な役割を担う


 これまで第一次世界大戦に関する考察は、それがしばしば「欧州大戦」と通称されてきたように、ヨーロッパの中心性を自明の前提として考えるきらいがありました。例えば、オスマン帝国の解体とアラブの反乱といった中東の事象は、脇役に追いやられる傾向がありました。大戦当時にエジプト派遣軍の司令官であったアーチボルド・マレー将軍は、中東の戦線を“sideshow of sideshows”と呼びました。つまり、「主役ではなく脇役」、あるいは、「主なる舞台ではない脇の舞台」、さらに、「脇の舞台の中のまた脇の舞台」というほどのニュアンスです。

 これは、その後の中東が果たす役割について、驚くほど洞察力を欠いていた発言と言わなければなりません。中東は、地中海とインド、ひいては、アジアをつなげる地政学的な位置と、石油天然ガス資源の存在によって、第一次世界大戦の前後にすでに進行していた地球規模の経済的相互依存でも、重要な役割を担うことが運命づけられていました。

 しかも、第一次世界大戦のインパクトは、むしろアメリカのウィルソン大統領による民族自決主義、すなわち、ウィルソン主義や、ソビエト・ロシアのボリシェヴィズムといった非ヨーロッパ世界の生み出したイデオロギーの強烈さにありました。それらの中心にあったのは、民族自決権と主権の独立、あるいは、主権独立国家や自治国家を承認する原理でした。

 この新たなダイナミズムは、近代ヨーロッパ各国の外交と国際秩序観に、大きな修正と転換を余儀なくさせました。イギリス、フランス、ドイツ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(2)中国共産党は超法規的存在?
国家の上に存在する中国共産党はどのような組織なのか
橋爪大三郎