第一次世界大戦から100年にあたって
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日本海軍の第二特務艦隊、地中海で奮戦す…その成果と教訓
第一次世界大戦から100年にあたって(3)第一次世界大戦における日本
歴史と社会
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
概して、日本人の第一次世界大戦に対する見方は希薄であるが、この大戦が日本の立場を大きく変化させたのは確かである。その変化は何を日本にもたらしたのか? また何が第二次世界大戦の悲劇につながったのか? 山内昌之氏が100年前の大戦と日本の関係を振り返って解説する。(全4話中第3話目)
時間:6分18秒
収録日:2014年11月5日
追加日:2014年12月30日
≪全文≫

●第一次世界大戦時、交戦状態の意識が希薄であった日本


 今日は、日本人の第一次世界大戦との関係について、少し考えてみたいと思います。

 日本人にとって、世界大戦と言いますと、すぐに第二次世界大戦を想起するように、このアジア太平洋戦争と比べた場合、第一次世界大戦に対する見方はすこぶる希薄です。当時においても、日本は交戦状態であるという意識そのものが希薄な戦争だったのです。と申しますのも、1902年に締結された日英同盟によって参戦しましたが、日本の陸軍部隊による参戦は、ドイツの租借地であった中国の山東(シャントン)半島の青島(チンタオ)への出兵ぐらいであったからです。


●第一次世界大戦後の日本の変化


 それでも、日本が戦後に置かれた立場というものは、大隈重信首相の表現を借りますと「天佑」と呼んだ大戦によって、国際的な大国として、その地位の改善に向けて大きく変わったのです。

 第一に、赤道以北のドイツが領有していたビスマルク群島をはじめとする南洋諸島を、日本は国際連盟の委任統治国として管理することになりました。さらに、一時的に山東半島青島のドイツ権益の継承も、イギリス、フランス、ロシア政府に認められました。こうして、アジア太平洋におけるアメリカとの勢力均衡に、ひとまず成功したことになります。

 第二に、日本帝国政府の権力を長いこと握ってきた政友会と陸海軍、そして官僚の排他的な支配を退けて、新しい政治状況として、政権交代が起き、第二党の勢力が台頭して大正デモクラシーの成立を動かすことになりました。

 しかしながら大戦中の1915年1月に、当時の北京政府に対して日本政府が対華21カ条要求を出して、ドイツ利権の継承、満州の権益期間の延長を図り、中国内政への介入権を求めた事実があります。これは、その後の日中関係を悪化させたのみならず、日華事変すなわち日中戦争への道を開くことになった、まことに遺憾な行為でありました。


●日本が担った第二特務艦隊による地中海護衛任務


 さらに、エジプトをはじめとする中東諸国との関係で申しますと、イギリスの要請を受けて、日本は1917年4月から第二特務艦隊を地中海に派遣し、ドイツの潜水艦の脅威を受ける連合国の艦船を護送する任務についた点にも触れておきたいと思います。

 当初、巡洋艦1隻と駆逐艦8隻、後には4隻が増派されま...

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