第一次世界大戦から100年にあたって
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ISが挑戦しているのはサイクス・ピコ秘密協定の無効化
第一次世界大戦から100年にあたって(1)20世紀の病根と21世紀の進路
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「2014年は後世、国際政治と世界史の転換点として記憶されるかもしれない」と山内昌之氏は言う。第一次世界大戦から100年。ようやく世界で一番むごかった戦争の痕跡が、中東でもウクライナでもそして日本でも、何か新しいものを吹き出そうとしているからだ。第一次世界大戦と中東、そして日本の関係を見詰め直すシリーズ講話の第一弾。

2014年は、第三次ガザ戦争とシリアにおける二重の内紛、ロシアによるクリミア併合など、「ポスト・冷戦期の終わり」を象徴する緊張が続出した。アメリカの影響力後退、地域主義の台頭、未承認国家の出現。とりわけ中東の地政学を大きく変動させる「イスラム国」は、国際世論を震撼させる存在だ。しかし、歴史的な見方を取れば彼らが挑戦しているのは、第一次世界大戦がアラブに強要した「サイクス・ピコ秘密協定の無効化」だ。イスラム国に対する拒否戦線を組むことで、世界は従来の国際秩序と国家観を守ろうとしているのだが…。(全4話中第1話目)
時間:11分41秒
収録日:2014年11月5日
追加日:2014年12月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●第一次世界大戦から100年にあたって


 皆さん、こんにちは。

 今年2014年は、第一次世界大戦が始まってからちょうど100周年に当たります。現在の世界は、さながら20世紀の初頭を思わせるかのような大激動に見舞われています。それは、あたかも世界史において、どの世紀も世紀の始まりは不安定な時期を経験するかのようです。

 唐突かもしれませんが、私はここでアラブの歴史家、14世紀のチュニジア生まれのイブン・ハルドゥーンの言葉を思い出さざるを得ないのです。

 「諸々の状態が完全に変化する場合は、あたかも全創造が、全世界が変わったかのようになる。それはまるで、新しい創造、新しい生成が起こり、新世界が生まれたごとくになる」というもので、『歴史序説(アル・ムカッディマ)』の一説から引いた言葉です。


●20世紀の病根は第一次世界大戦に由来する


 特に現代中東の複雑かつ混沌とした政治構図は、これまでの世界史においても類を見ないほどです。その大きな要因は、第一次世界大戦中の連合国による秘密条約や偏った約束にあります。例えば1916年のサイクス・ピコ秘密協定は、現在のイラク、シリア、パレスチナ、ヨルダンの分割に関わる協定です。あるいは1917年のバルフォア宣言ですが、こちらは、パレスチナに「ユダヤ人の故郷(ジューイッシュ・ホーム)」をつくることに関するイギリスの約束で、イスラエルの建国につながりました。こうしたことにさかのぼるもろもろの複雑さが、今日の混沌をもたらしているのかと思います。

 第一次世界大戦は、世界史でも未曽有の残酷な戦法、新しい戦い方、あるいは破壊的な結果をもたらした恐るべき戦争でした。この事実について、イギリスの歴史家ジョン・キーガンは、「20世紀の病根のほとんどすべては第一次世界大戦に由来する」と言いました。これは過言ではないと思われます。


●2014年のアラブ世界で進行する三つの戦争


 この事実は、特に中東に当てはまるように思われます。例えば、2014年にアラブ世界では性格の異なる三つの戦争が同時に進行しましたが、その原因は実際には100年前にさかのぼるのです。

 第3次ガザ戦争とも呼ばれる、ガザにおける今年の戦は、パレスチナ人の民族自決権、そしてイスラエルの安全保障をめぐる対立が高じた上の衝突です。

 他方、シリアの内戦は、「ア...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
こどもと学ぶ戦争と平和(3)「小さな外交官」と少年兵の問題
外国が攻めてきたらどうすればいい?戦争と少年兵の問題
小原雅博
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
プロセスこそが貴重…AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
齋藤純一
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(4)新規事業成功のポイント
新規ビジネスの立ち上げ方、伸ばし方、見切り方の具体例
水野道訓
おもしろき『法華経』の世界(9)「如来寿量品」と三身論
仏の寿命は無量で久遠に実在する…「如来寿量品」の神秘
鎌田東二