第一次世界大戦から100年にあたって
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
バブル景気、格差社会、政界再編‥100年前との共通点
第一次世界大戦から100年にあたって(4)大戦期と現代日本を比較して学ぶべきこと
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
第一次世界大戦は100年前のことでありながら、その戦中、戦後の様子には現代の日本と多くの共通点を見出すことができる。今、私たちは大戦と現代の比較に何を見出し、何を学ぶべきなのか。山内昌之氏による過去に学び現代を知るためのシリーズ講話最終回。(全4話中第4話目)
時間:11分48秒
収録日:2014年11月5日
追加日:2014年12月31日
≪全文≫

●第一次世界大戦期と現代日本の共通点-1.バブル景気とその後の不況


 皆さん、こんにちは。100年前の日本と第一次世界大戦との関係を、別な角度から今また考えてみます。特に、現在の中東情勢がアラブ諸国に限らずトルコについても、100年前の大戦とそれに関係する条約や協定の負の遺産と結び付いているのと同じように、100年前の歴史や事象を振り返ることで、現代の日本とのアナロジーを見出し、教訓を引き出すことができるのです。

 今と似ている点の第一は経済です。第一次世界大戦に伴う戦争の景気は、成金を生みました。大戦開始の翌年、1915(大正4)年の後半から、日本経済は空前の好況に転じました。アジア市場からヨーロッパ製の商品が後退した後、一時的に日本が輸出市場を独占したからです。特に、鉱山、造船、商事の3業種は、花形産業としてうるおい、年5割、あるいは年7割といった株式配当をする会社も多くなりました。こうして、にわか成金、ヌーボー・リッシュともいうべき者たちが続出したのです。

 日本政府と日本銀行の保有する金貨や金の地金は、1914年から1918年の間に、当時の邦貨で約3億4000万から約15億9000万に増加しています。この結果、第一次世界大戦まで約11億円の債務国であった日本は、1920(大正9)年には、27億7000万円以上の対外債権を有する債権国に転換しました。これによって、日本は農業国から工業国へ脱皮を図ろうとし、重化学工業の発展も見られたのです。

 日本人にはよく知られた成金の風刺画があります。ある有名な船成金の話です。北海道の函館の料亭で大散財をした揚げ句に、帰る途中、彼は玄関で履物を履こうとしたところ、足元が暗くてよく見えなかった。そこで、懐から無造作に百円札の束を取り出した。当時の百円札は最高額の紙幣でしたが、その百円札を取り出して、そこで火をつけて足元を照らして見た、という絵で、実際にあった話のようです。
 
 これほどではないにせよ、1986(昭和61)年から1991(平成3)年までのバブル景気の時代には、似たような成金風景が日本の一部で観察されたものです。1980年代後半には、東京都の山手線の内側の土地価格で、一説にはアメリカ全土が買えるというほど、日本の土地価格が高騰したと言われています。日経平均株価は、1989(平成元)年のおしまいに...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新