折口信夫が語った日本文化の核心
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
なぜ大晦日におせち料理を食べてはいけないか?神様の来訪
折口信夫が語った日本文化の核心(2)宗教文学発生説と「依代」
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
折口信夫は日本文学について、非常に早い段階から5音句と7音句から成る「律文学」であることに気づいた。これが神とコミュニケーションするための一つの約束事で、そこから日本の文学が発生したと考えた。そこで折口信夫が取ったのが「宗教文学発生説」である。そして神をもてなすための工夫から生まれたのが、大晦日の大掃除であり、正月のおせち料理である。ここには「依代」という大事な意味が込められている。(全4話中第2話)
時間:16分17秒
収録日:2022年9月13日
追加日:2023年1月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●なぜ日本の文学は歌が散文よりも古くからあるのか


 折口信夫は日本文学の成り立ちについて、非常に早い段階で「律文学」、つまり決まり事のある詩であることに気づきます。簡単にいうと「5音句」「7音句」に区切る。5音句と7音句に区切ると、なんとなく和歌になってしまう。なんとなく歌のように聞こえます。

 「よき人の よしとよく見て よしと言ひし 吉野よく見よ よき人よく見つ」

 これは「よい人がよしとよく見て、よしと言った吉野をよく見なさいよ、今のよい人たちも」という意味の1つの歌になっています。5音句と7音句に区切ると、なんとなく歌のように聞こえるのです。

 標語でも「狭い日本 そんなに急いで どこへ行く」や、ちょっとした注意の看板も「この土手に 登るべからず 警視庁」とするなど、5音句と7音句に区切れます。5音句と7音句に区切って声を掛け合うことが、神とのコミュニケーションのための1つの約束事だった。そこから日本の文学が発生するのです。

 さらには神様がやってきて、「おまえたちの村は、幸せにしてやろう」などと言って「呪禁」(じゅごん)、つまりおまじないの言葉を言ってくれる。それを長い間、数世代にわたって伝えていくことで、言葉が洗練されていく。これが「日本文学の発生」というわけです。

 これがまた難しくて、発生と成立はどう違か。成立はというと、712年に稗田阿礼(ひえだのあれ)が読んでいたテキストを、稗田阿礼がいなくなっても読み伝えられるように太安万侶(おおのやすまろ)が書き連ね、注記をつけて誰もが読めるものにした。これを712年に元明天皇に献上したのが、成立です(編注:(『古事記』が編纂された年)。

 また『万葉集』は、8世紀中盤頃に編纂されます。編纂者の1人に大伴家持(おおとものやかもち)もいたであろうと考える。これらは時間的なものですが、例えば、このような考え方もあるのです。

 なぜ日本の文学は歌のほうが古く、散文の発達が遅れているのか。なぜ文学という意識が生まれてくるのか。それは、文学という意識が生まれてくるために宗教的な何らかの詞章が文学になっていく道筋があるから。なぜなら、神様が与えてくれた言葉を長く保持するにはそうする必要があるから。いわゆる無文字社会(文字がない社会)では、そういう形でしか長く言葉を伝えていくことができないから、というわけです。

 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
ムハンマドを知る(1)その役割と人物像
ムハンマドは神の啓示を受けた預言者で共同体の最高指導者
山内昌之
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像
こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は
杉山晋輔
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
『貞観政要』を読む(2)著作に登場する人物たち
房玄齢・杜如晦・魏徴・王珪―太宗の四人の優れた側近
田口佳史
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(2)“変わり者”の生かし方と後継者選び
「人材の組み合わせ」こそ「尖った才能」を輝かせる必勝法
水野道訓
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己