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遠近法は「見る」文明、逆遠近法は「見られる」文明

逆遠近法の美術論(2)遠近法と逆遠近法

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
遠近法は西欧文明がルネッサンスの時代に発明したもので、我々が見たとおりに表現する。この「遠近法の思想」から、民主主義も生れ、科学文明も生まれた。一方、イコンに象徴的に示される「逆遠近法」は、原始性を持ち、複眼的である。その意味でイコンは、本来、日本の漫画や浮世絵にも近い。ところが、西欧に汚染された日本画は、今では遠近法で描かれるようになってしまった。西欧的な「遠近法」的な視点で見ると、平面的なイコンは、幼稚な芸術に見えてしまう場合もある。だが、じつは西洋人が幼稚な芸術と評するイコンほど、霊的に素晴らしいのだと、パーヴェル・フロレンスキイは語ったのだった。(全10話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:44
収録日:2022/08/30
追加日:2023/03/17
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≪全文≫

●遠近法の思想が民主主義を生み出し、科学文明を作った


―― すごいですね。先生に気づかせるところまで読み込んで、それを表現にまで落とし込んだわけですね。

執行 それを表現できるのがすごいことで、芸術的天才がないとできないことです。私は感じる心はあっても、それを絵にしたり、音楽にしたりすることはできません。なんとか言葉でしゃべろうとしているぐらいです。

―― ウナムーノの詩をこの絵にしたわけですからね。

執行 これが何点もあって、詩の中のいろいろなものに従って描いてあります。すべてを八反田先生ご自身が気づかれているかはわかりませんが、すべての作品が「逆遠近法」で描かれています。

 最初に遠近法を少し理解しておく必要があります。民主主義と科学文明は、簡単にいうと遠近法です。よくルネッサンスの時代に、ヨーロッパ文明は遠近法を発明したといいますね。

―― はい。

執行 これは科学文明のことです。我々が見たとおりに表現する力です。だから我々も、もうそこで「神」になったのです。実は自分たちが神になったことに、まだ気づいていないのです。

―― なるほど。

執行 それに気づかないで、芸術的に作り上げたのがルネッサンス期にできた遠近法です。あれが民主主義を生み出した。嫌な言い方をすれば、遠近法の思想が民主主義を生み出し、科学文明を作ったのです。それが原爆を生み出し、現在の公害社会を作ってしまった。

 それに引き換え、東方正教会のイコンは逆遠近法です。逆遠近法とは何かというと、多視点、見る目がたくさんあるということです。それからプリミティブ。要するに原始性です。

―― 原始ですね。

執行 古代。原始性。それから多視点性。視点がたくさんあるということ、複眼です。だから神道的でもあり、日本的といえば日本的。

―― 確かにそうですね。神道的ではありますね。

執行 そう、神道的なのです。これが逆遠近法で、「宇宙全体の力」で芸術を見ているのです。宇宙全体の力ということは、言い換えると神の視点です。

―― なるほど。

執行 イコンをよく見ているとわかるのですが、イコンとは、人間が我々の合理的精神で見ているのではないのです。イコンから、我々が「見られている」のです。

―― 見られているのですか。

執行 簡単にいうと、我々が「見る」文明が、遠近法。我々が「見られる」文明が...
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