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「私=私」ではなく「私は私ではない」

逆遠近法の美術論(4)霊性文明と「脱聖化」

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
仏教大国のミャンマーではコシノジュンコ氏のファッションショーが喝采を浴びたが、東洋で評価されるのは平面図で、本来はこれこそが人間の循環の文明の発想である。そのことを理解するためにも八反田友則氏の絵を見てほしい。西欧文明は「私=私」、霊性文明は「私は私ではない」。この「私は私ではない」が分からないと、八反田氏の絵は分からない。もう一つ重要なのは、キリスト教の「インカーネーション(受肉)」である。「受肉されているから、我々はもう神と同じである」という見方が、悪い意味での西欧文明を作った。ここから抜け出すことが「脱聖化」だが、それに成功しないと霊性文明は分からない。(全10話中第4話)
時間:12:33
収録日:2022/08/30
追加日:2023/03/31
カテゴリー:
≪全文≫

●循環文明こそが当たり前であり、西欧文明のほう珍しい


―― コシノジュンコさんはミャンマーのサッカー代表のユニフォームをデザインしています。私は別の用事でミャンマーに行ったとき、同じ飛行機にコシノジュンコさんがいて、彼女がミャンマーでやるファッションショーに招待されました。そのときに彼女のデッサン図がズラッと置いてありましたが、それは先生が言われるように、まさに平面図でした。

執行 平面図でしょう。

―― だから、最初は分かりませんでした。でも仏性が強い。ミャンマーは仏教大国ですから、ミャンマーの人にはものすごくウケたのです。

執行 そうですか。

―― ミャンマーの人は、どんなに貧しい人でもお布施を出しに行きます。寺院も、日本の仏教寺院とまるで違う。そうした中で、あの平面図がウケるのです。

執行 分かりやすいのです。インドの色彩豊かな神様の芸術も全部そうです。東洋はそうなのです。

―― ヒンドゥーも先生の言われるとおりですね。

執行 だから、珍しいものではなく、本当はあれが人間の循環の文明です。文明史や人類史を研究すると、ルネッサンス以来の西欧文明のほうが、どちらかというと珍しいのです。珍しいから勝ったのです。全部を植民地にして、要は力ずくで虐げただけですから。

―― 無限成長ですからね。

執行 宇宙の一環として、当たり前に循環文明で暮らしていた普通の人にとって、今流の兵器を持ってこられたら、力でかなうはずがない。その始まりがあの砲艦外交の黒船です。日本もみんな黒船にやられた。「文句があれば、江戸に大砲撃ち込む」とペリーははっきり言っています。話し合いではない。「話をしないなら、江戸城に大砲を撃ち込む」というのが話し合いなのかという話です(笑)。

―― 本当にそうですね。結局同じなのですね。トゥキディデスの『戦史』に出てくるメロス島の人たちと同じようなものです。話し合いや正義は、力が対等のときにだけあると。

執行 そういうことです。だから、実際にはもう循環文明に戻る。西洋人でも、優れた人は全部分かっていますが、民主主義は大衆文明です。西欧の大衆は分からないということです。

―― なるほど。

執行 19世紀に日本画から影響を受けた人が印象派を作りました。ルノワールとか。

―― 浮世絵から。確かにそうですね。

執行 彼らは循環文明や、今言ったイコ...
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