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霊性文明の危うさと、無限成長の危うさに共通するもの

逆遠近法の美術論(5)インパール作戦と無限成長はイコール

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
江戸時代とビザンティン帝国は、近いところまで到達したと言われる霊性文明――。特に、幕末の日本人の生活を見ていると、本当に霊性文明を感じる。日本人はみな武士道に憧れ、武士のような指導階層がいたからである。しかし、明治、大正が終わり、昭和になると、「人命軽視」という悪い面が出てくる。インパール作戦のような無謀な作戦が平気でできたのも、そのためである。霊性文明にはそうした危うさがある一方、西欧の、人間を必要以上に高いものに見る「人命尊重」や「無限成長」にも問題がある。インパール作戦と無限成長とに変わりはない。このことが分かるかどうかが重要である。(全10話中第5話)
時間:10:40
収録日:2022/08/30
追加日:2023/04/07
カテゴリー:
≪全文≫

●「見られている」という見方をすると「神のまなざし」が見えてくる


―― (八反田友則氏の絵を)見る前に聞かせてもらうと、すごく分かりやすいですね。

執行 先ほどの「義ならざるものは結局美でない」も相当分かりやすいでしょう。

―― あれもすごいですね。

執行 この美術館の座右銘です。

―― 義と愛が違うというところも。

執行 そうですね。「愛」は「義」の中に含まれるのです。あとは「見られる」。作品を見ようとすると分からなくなる。作品から「見られる」ということが分かってくると、だんだん分かるようになるのです、八反田先生の絵は。

―― ギリシャ正教とローマカソリックの違いが、ものすごいですね。

執行 そうです。あとでちょっと説明しますが、大雑把に言うと、このような文明の違いがあるのです。

―― 先生が言われることの真逆が、メトロポリタン美術館です。

執行 そうでしょうね。(西洋美術の)代表だから。

―― 代表で、ニューヨークの金持ちの総本山。しかも全部、その絵画は遠近法です。(アメリカン・リアリズムの代表的画家)アンドリュー・ワイエスから始まって、全部。

執行 はい。

―― ただ少し変わり始めています。先生が言ったように飛び抜けて優れた人、飛び抜けたる金持ちは、少し変わり始めている。

執行 ほう。

―― きっかけになり始めているのではないか。でも何も分からずにロシアの美術館に行ってイコンをたくさん見ても、普通はなかなか理解できません。遠近法に慣れているから。

執行 だから「幼稚」と思うのです。

―― すごくよく分かります。漫画みたいに見える。浮世絵みたいに見える。ヨーロッパのエルミタージュ(美術館)から持ってきた絵は別にして、もともとあった絵を飾ってある空間に行くと、やはり幼稚に見えるのです。

 でもなぜそうなのかと考えたとき、先生の説明は非常に分かりやすいですね。「見られている」のか「見ている」のか。

執行 その違いによって、幼稚なものが本当に深淵になる。「見られている」という見方をすると、イコンの中にある本当に神のまなざしが見えてくるのです。

―― 仏教で言う「空と縁起」みたいなものですね。あれだと相対化できるから、本当は楽ですよね。

執行 そうです。

―― 生きていくのがすごく楽になる。はるかに安らかに行けるのに、それを放っていますよ...
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